冷たい彼女を振り向かす方法【木兎光太郎】 (ページ9)

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８：夜久衛輔ページ9

現地到着。バスから降りて荷物を下ろす。私は光太郎に荷物を奪われたのでスポドリの籠とタオルとボールの入ったバッグを持った。するとまた誰かに荷物を取られて振り返ると

「衛輔……！」

ずっと会いたかった人がいた。

「よう。一緒に持ってくぞ。」

彼は私にとってお兄ちゃんみたいな存在で。憧れの人である。お兄ちゃんみたいな存在だから、恋愛的に好きとかそういう訳では無い。

だから存分に楽しめる。一緒にいれる。

「おい、お前また飯抜きしてるだろ」

「してない」

「本当か～？」

「本当だよ」

荷物を置き場において、私は衛輔と集合場所に戻る。衛輔の顔を見るのが久々すぎて頬がゆるんだ。私は衛輔の頭をクシャクシャになでる。衛輔より身長高いから。衛輔が嫌そうに私の顔を見た。

「馬鹿にしてんだろお前」

私の頭をぐしゃぐしゃに撫で返す衛輔。

「してない。ただ、小さいくて可愛いって思っただけだよ」

「馬鹿にしてんだろーが！」

頭をぺしっと叩かれた。

「A！！早くしろよ！」

「今行くよ」

「え、A先行っちまうのか？」

「ごめん。“光太郎”に呼ばれたから。」

夜久side

「ごめん、“光太郎”に呼ばれたから。」

Aは小さく手を振って俺の前を小走りで遠ざかっていく。また小さくなるその背中を送って俺は一人で歩いていた。“光太郎”。なぜ呼び捨てなんだろうか。ただ嫌な気持ちになる。

だってAは

今まで俺に頼ってて、俺とずっと一緒にいて。

高校に入ってからは会えなくて。

俺からいなくなるな、って感情が俺を取り巻いた。ぐちゃぐちゃの感情がイライラと頭にのぼる。すると黒尾が来た。

「おいおい、なに可愛い子と一緒に歩いてんだよ」

「幼馴染だからな。」

「ちっ。俺に紹介してくんねぇ？」

「断る。このトサカヘッド」

Aをこいつに紹介したら、Aはすぐに襲われそうだ。

「トサカヘッドは余計だ」