１７：好きな気持ち ページ18
好きな気持ちってのがわからなくて。恋なんてしたことないなんて少女漫画みたいだと自分で思う。でも案外周りには恋したことないやつが多数いた。中学時代は。
今となってはリア充がいっぱい。
「赤葦、私はここで。雪絵の指をテーピングしてくるね。」
「はい。では」
雪絵がさっき指を水道にぶつけた。
だからテーピングする。
「雪絵、持ってきてやったよ」
「おぉ〜ありがとさん」
今までこの喋り方だったから色々と悪口を言われた。まぁ上から目線、みたいな。自分で自覚してる。だけど口癖すぎて直せない。
「A、聞いた？木兎がAの好きかもって……A？……あ」
雪絵の指にテーピングをしている時、ザッという足音が聞こえて振り向いたら光太郎が立ってた。目を丸くして黙っている私と冷や汗を流し苦笑いを浮かべる雪絵。光太郎は耳を真っ赤にさせていながらも怒ったように口を尖らせた。
光太郎が赤面してるから、本当だと思って私だって顔が赤くなる。熱くなる体と頬。嫌になってそっぽを向いた。雪絵の手にテーピングを続ける。光太郎が『ぅ……』と口を開いた。
「ぅ、嬉しいかよ……俺がお前のこと好きだったら」
「あら〜」
ニヤニヤ笑う雪絵。
「は、知らないよ。んなこと。」
「そうかよ…」
「その返しは良くない」
私の耳も真っ赤になる。
「ったく〜リア充は〜」
雪絵のテーピングが終わった。その途端に雪絵は大きいあくびをしてから手を振って『頑張れよ〜』と言って去っていった。意味がわからない。何を頑張ればいいのだ。
光太郎がポリポリと頬をかく。
「俺、別に……お前の事！好きじゃねぇからな！」
ちょっとだけ、嫌だなって思った。
ちょっとだけ、辛いなって思った。
痛いな、何でだろう。胸が痛い。ズキリと痛む。好きじゃないって知ってるし。私の口調と性格が光太郎の嫌いな気持ちを引き出す。
そんなこと分かってた。だってさ、どんなに頑張ったって。みんな嫌われて終わるし。どうせ、こんな嫌な思いするならさっさと離れた方が良かったのかもしれない。
拳を握った。
光太郎は気まずそうな顔をして去っていく。
「……知ってるよ…」
ただそう呟いた。
嫌いだ。嫌いだ。
好きな気持ちなんて知らない。知りたくもない。
恋なんてしたくない
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作者名：穀海* | 作成日時：2017年5月25日 7時
