１６：見つめあって ページ17
「赤葦。それ取って」
「どれですか？」
「そこの棚の箱だよ。」
何故か棚の上の上に置いてある救急箱にムカついて赤葦に取ってもらうことにしたわけだが、意地悪されてとってもらえないのが現状。私はため息をついて『光太郎に頼む』と言ったところ。冗談です、と苦笑いをして取ってくれる。
が、彼の身長でも無理なようで、そこにある椅子を引きずって彼が乗る位置まで持ってきた。赤葦はお礼を言って椅子に乗る。
救急箱を取ると、まず机に救急箱を置いた赤葦。つぎにいすからおりようとしたところ。
ガタンと音を立てて
「危なっ……！」
赤葦は私を押し倒した。
３秒間だけ
目が合った。
「あの、離してくれないかい……？」
「すみま、せん」
顔を赤くしてよろめく赤葦。最初彼が倒れてきたと同時に彼が私をかばったのか私の背中には彼の腕があった。捻挫でもしていたら、と考えて。私は彼の腕をそっと撫でた。
「もしかして、筋肉フェチですか？」
「……は？」
変な勘違いをされたのはともかく、痛いところはなさそうだし多分大丈夫だろう。取り敢えず彼に手首を動かしてもらったり腕を回したりしてもらった。案の定怪我はなく、元気だった。
「先輩、すみません」
「いいんだよ。」
「や、あの。その。木兎さんがいるのに」
「え？」
「え？」
彼の言ってることが意味がわからず思わず聞き返す。彼も同じように返してきて沈黙に至る。私は彼の顔を見て言った。
「光太郎とは付き合ってないよ」
「え……でも。二年で噂になってますよ？」
「そりゃでまかせだね。」
無理もないだろう、今まで地味中の地味、そして目立たない。誰かわからないくらいの地味で影が薄かった私が。人気者でお調子者、私とは正反対の人気男子が私なんかと仲良くし始めた。それに私は男子とかかわらなかったし、彼も女子とはそこまで関わっていなかったそうだ。
赤葦が変な勘違いをしてすみません、と頭を下げた。どうしてそこまで畏まる。
「赤葦、そろそろ頭上げなよ。」
「あ、はい。」
「ほら、行くよ」
救急箱、重い救急箱を持ち赤葦を横目で見た。赤葦は『待ってください』とついてくる。可愛らしい後輩で。なんだか微笑ましかった。
「Aさんは、
夜久さんと木兎さんどっちが好きなんですか？」
「……何言ってんだい？」
「え、だから」
「……どっちも、好きだから」
そういう意味合いじゃない事を赤葦も分かってくれた
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作者名：穀海* | 作成日時：2017年5月25日 7時
