13:好きなら好きで ページ13
「Aってさ、木兎と夜久くん、どっちが好きなの?」
「好きなのって言われたって。私は分からない。好きというのがわからない」
「固いね〜Aは!」
「そんなことない」
3人で食堂を出てからスポドリを作っていた。私はタオルを畳む。かごに綺麗に揃えて入れた。雪絵が相変わらずニコニコしながら言い出した。
「ま、Aが木兎好きなら容赦しないからね〜」
ただ単純に、純粋な彼女の気持ちを聞かされただけで。なのに少し胸がズキッと傷んだ。雪絵の事をかおりは眉を下げて苦笑いで見ていた。どうしょうもなく嫌な気持ちになって。畳んでたタオルを握った。
彼女が光太郎を好きなのに意味はあるのだろうか。私になんの関係があるんだろうか。なぜ気になるのだろうか。頭の中がぐちゃぐちゃだ。
「かおりは好きな人とかいないのー?」
「私は万年恋人なしとかじゃなくて好きな人ができたことがない」
「それ、一緒だよ」
真顔でハイタッチをした。
「そっかそっかー。木兎に恋しないでね〜」
「しないわ!あんなうるさいヤツ!」
ただ黙るしかなかった。彼を否定すれば、何故か嫌な気持ち罪悪感みたいなのが私をひねり潰そうとするから。
「A、次の試合は音駒のマネをしてくれ」
「わかった」
鷲尾はそう告げて早々と去っていく。
「鷲尾ってシャイだよね〜」
「どこぞのお父さんみたいだね、ははは」
「Aもあんま喋んないよね」
「いや。結構喋る方だよ」
「夜久くん!?」
いつの間にいたのだろうか。彼を見たら手に血がついてるではないか。怪我をしているのだろうか。私は彼の手の爪の先をみた。血がぽたりと垂れた。爪が剥がれている。
「夜久くんは何でここに?」
「二次災害にあった」
「大丈夫?」
かおりが衛輔と会話をする。その間に彼の血が。
「二次災害って〜?何があったのー?」
「オーバーしたら爪が剥がれて、後ろに重心がかかったらオーバーし損ねたボールに足引っ掛けて捻挫した」
「やば。」
私は呑気にそう語る衛輔を睨んだ。衛輔が冷や汗を垂らして『何だよ』とぎこちなさそうに聞いてきた。何だよもなにも。衛輔が怪我してること自体嫌だ。だから私はすぐ横の下に置いてある救急バックを開けた。
「ほら、あんたの大好きなAちゃんに手当してもらいな」
「うるせぇ!」
「早く」
「お、おう」
頬が熱いのを隠したいから私は素早く足にテーピングを巻いた。
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作者名:穀海* | 作成日時:2017年5月25日 7時