愛 ３７ ページ38
「A」
「何ですか」
宮侑は下を向き歩く。私も下を向いて、彼の足に合わせてみた。呼吸があっているかのように足は淡々と進み同じリズムで音を立てた。暗い夜道。静かだった。少し、宮侑は黙り、口を開いた。
「なぁ、過去って何」
宮侑は表情一つ変えなかった。ただ途中途中にある街灯に照らされ、少し虚しく思いえた。過去、彼が聞くのは問うのは私の過去だった。その過去は赤葦京治しか知らないものだった。言いたくなかった。言ったら、本当に。本当に。
「何でもえぇよ。話してほしいんよ。」
彼は『無理にとは言わない』と言ってから口を噤む。私は距離を置くように立ち止まった。少し経ってから私が立ち止まったことに気づいた宮侑。私の方へ振り返ったのだった。優しく、暖かい目。私を包むようなその温もり。
言ってもいいかな、なんて緩んだ思い。だけど、どこかで軽蔑されてしまうのでは無いのかと心配していた。否、怯えてた。心の中で、言ってしまえと叫んでた。矛盾する気持ちに追いつけなくて。
「俺な、Aのこと知りたいんよ。」
「……」
黙った。私に彼は微笑みかけた。その笑顔に押されてしまったのだろうか、私は噤んでいた口を開いた。宮侑はまた口角を上げて笑った。
「……私、人を殺したんですよ。８歳で。」
私はそう告げた。彼は少し目を丸くさせ、驚く。私はうつむき加減で言葉をつなげる。言うのが辛かった。嫌われてしまうのではないか、と。
「私の母はとても厳しい人でいつも怒ってる人でした。それに比べて父は、自由人で優しい人でした。それでも父は母を愛していました。私も両親が大好きでした。」
そう、私は両親が大好きだった。愛してた。喧嘩してても、私を怒っても、母が私に暴力しても。私は心変わりせずずっと家族だと思い続けてた。母は愛情表現が下手だった。だけど、父はちゃんとそれを受け止めた。そんな凸凹な家族でも成立してた時だった。
父は何と私と同じようなことをする人だった。殺したりする人。マフィアの一員で。母はそれを知らなかった。私だけが知っていたんだ。父はある日、家に帰ってきた。私と母は一緒に料理をしていて。
いつもフレンドリーな父は静かだった。黙っていた。苦しそうだった。母は心配して顔を覗き込んだり話しかけたり。だけど何一つ反応しない父に腹を立てた母。父は言った。
「ごめんな」
父の方に目を抜ければ、私の横を通過した銃弾が、母を貫いた。
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萌々子(プロフ) - 埜餡さん» 出すことにしました！ありがとうございます！ (2017年8月23日 19時) (
レス) id: 7e27c0b7c2 (このIDを非表示/違反報告)
埜餡 - 萌々子さん» 続編出して欲しいです！！ (2017年8月21日 0時) (レス) id: 25518f8173 (このIDを非表示/違反報告)
萌々子(プロフ) - 埜餡さん» 続編出すか出さないかで迷っています。明後日までには終わらせるか続編を出せればと思います！なのでもうしばらくお待ちしていただいてもよろしいでしょうか？本当にすみません。明後日までには更新いたします。 (2017年8月18日 16時) (レス) id: 7e27c0b7c2 (このIDを非表示/違反報告)
埜餡 - 萌々子さん» すいません、続き気になるんですけど、、 (2017年8月18日 14時) (レス) id: 25518f8173 (このIDを非表示/違反報告)
萌々子(プロフ) - 埜餡さん» ありがとうございます！そう言ってもらえると嬉しいです！ (2017年7月15日 21時) (レス) id: 7e27c0b7c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：穀海* | 作成日時：2017年4月3日 19時
