愛 32 ページ33
「だいじょーぶや。俺が守ったる。命にかけてな」
「嫌です。それじゃ、意味無いです」
溢れそうになる涙をこらえる。なんでこんな時に限って涙が出そうになるのだろうか。彼の優しさが私を包んでいるのだろうか。命にかえても守るなど、アニメのセリフでもあるまいし。
でも彼なら本当に実行しそうで、偽りや譫言ではないということは分かってる。だけど、そのせいで宮侑が死んだら。私が生きている意味は無い。
宮侑は私の頭を撫でる。『ありがとな』って言って私を撫でる。その大きい手が私を包む。好きだなって思った。
恋なんて人生でできないって諦めてた。愛なんて知れない、とそう思うほどで。私はぐにゃりと曲がった道を行くのだと思ってた。愛なんてどうでもいいって思ってた。
だってだって、必要ないから。私の任務は今更だけど宮侑を殺すこと。彼の仕事は私を殺すこと。なのにここから出て一緒に逃げるなど、殺されに行ってるようなもんなんだ。
「本当はAを殺さなあかんのな」
「…はい」
彼はどこか遠くを見つめた。
胸がきつく締められる感じ。
「こんな辛いこと、ないやろなぁ」
彼は銃を取り出した。あぁ、またこの下りか。とか思いながら覚悟した。所詮譫言の約束。彼のことを信じていいなんて明確なことは知らなかったし、今ここで殺されるのも僅かな可能性って訳ではなかったから、殺されてもおかしくないのだ。
とか思っていると宮侑は私以外の人物に語りかけるように言い出した。
「なぁ、そうやろ?」
足音が聞こえた。男の人だとわかるような足音で。私が後ろを振り返るとそこには紛れもない赤葦京治がいたのだった。私は目を凝らしてよく見ると赤葦京治の頬には赤く滲んだ血が付いている。
「誰殺してきたんよ」
「あの女」
「そうかいな」
あの女とはきっとあの部屋にいた女の人だろう。
「恋しちゃうのわかるで。なぁ、Aに恋したんやろ?白状しぃや」
「Aを守るためにあの女を殺したんとちゃうか」
赤葦京治は口を止めた。宮侑は淡々と赤葦京治に話しかけている。状況が掴めなくなってしまった私はどうしょうもなくただ座っているだけ。
赤葦京治が私に恋をした。
ただその言葉を耳にした。だけれどそんなこと信じられないのだ。敵であり。会った事は数少なくて数え切れるほど。
「Aは覚えてないと思うけどさ、俺はAの一番最初の友達なんだよ」
何を言っているのかわからなかった。
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萌々子(プロフ) - 埜餡さん» 出すことにしました!ありがとうございます! (2017年8月23日 19時) (レス) id: 7e27c0b7c2 (このIDを非表示/違反報告)
埜餡 - 萌々子さん» 続編出して欲しいです!! (2017年8月21日 0時) (レス) id: 25518f8173 (このIDを非表示/違反報告)
萌々子(プロフ) - 埜餡さん» 続編出すか出さないかで迷っています。明後日までには終わらせるか続編を出せればと思います!なのでもうしばらくお待ちしていただいてもよろしいでしょうか?本当にすみません。明後日までには更新いたします。 (2017年8月18日 16時) (レス) id: 7e27c0b7c2 (このIDを非表示/違反報告)
埜餡 - 萌々子さん» すいません、続き気になるんですけど、、 (2017年8月18日 14時) (レス) id: 25518f8173 (このIDを非表示/違反報告)
萌々子(プロフ) - 埜餡さん» ありがとうございます!そう言ってもらえると嬉しいです! (2017年7月15日 21時) (レス) id: 7e27c0b7c2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:穀海* | 作成日時:2017年4月3日 19時