執行官ノ哀哭【PSYCHO-PASS】

07 : 本領1割発揮 ページ9

ホロスーツを纏っている征陸と常守の前方で、冷泉は不審で無い程度に辺りを見回す。途端、冷泉の目つきが鋭利になった。そして不適に笑う。


「対象、見つけました」


2人にしか聞こえない声で言った冷泉が、顎で指した先に柱の影に隠れる1人の男が居る。「ああ、あれか」征陸が冷静に言う。常守は驚いていた。


「そんな…スキャナーも使わずにどうして？」

「“獣物”は、“ケダモノ”の匂いを嗅ぎ当てる。特に美護は、それに長けてるんだ」

「私が行くと面倒だから。まずは2人で、お願いしても？」


にこやかに笑う冷泉に征陸は溜息をつく。「最近つくづくコウに似てきやがったな」「最高の褒め言葉ですねそれ」征陸はさらに溜息をついた。

征陸と常守が対象の元へ。冷泉は手袋を引っ張り直す。これは彼女が刑事の顔になる時の癖である。


「失礼しまーす。サイコパス測定にご協力お願いできますか？」


征陸がそう声を掛けた直後、対象は常守を突き飛ばし逃亡を図る。が、突として目の前に現れた冷泉に阻まれる。


「クソッ…！」


常守と同じように冷泉も突き飛ばそうとした。が、なんとも簡単に手首を掴まれる。どうにかして振り解き足掻くも、最終的には腕を捻り上げられて隅へ追いやられた始末。


「かなり濁ってますよ、色相。緊急セラピーを要するものと判断できますねえ」


対象の背に乗り上げたまま、柔和な笑みで冷泉は言い放つ。


「ご同行、願えますか？」

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