23:希望は希望のままか否か ページ25
常守監視官とスプーキーブーギーのチャットのログを洗い直す慎也さんの隣で、私は煙草を吹かす。
EXOSETの一件から、なんだかずっと、胸中がざわついている。おかげで一日に吸う本数が増えた。
ああ、もう。無性に腹が立つ。
「あ、あの。冷泉、さん」
呼ばれた方に顔だけ向けると、なんだかおどおどしている監視官。煙草の煙か、匂いか。どちらかが嫌だったのかもしれない。
「ああ、ごめんね。煙、嫌だった?」
「い、いえ!そういうんじゃなくて、その」
「何?」
「大丈夫、ですか?」
肺の心配をしてくれているのかなと、一瞬思った。けれど、多分、そうじゃない。分かっているけれど、悪戯心が勝ってしまって。
「はは。肺の心配してくれてるの?優しいねえ、常守監視官は」
「え、あ、あの、えっと」
「宜野座さんなんて、心配すらしてくれないよ。煙たい顔されるだけだから」
「は、はあ……」
「美護」
慎也さんは私を呼んだけれど、視線はディスプレイに向けられたままで。
はいはい、と。私は常守監視官に向き直る。
「ごめんね。意地悪しちゃった」
「え?」
「私は大丈夫だから。少し、疲れてるだけ。宜野座さん、全然非番くれないから」
内緒だよ?と人差し指を唇の前で立てれば、常守監視官は安心したような笑顔を見せた。
煙草を咥えながら、すすす、と慎也さんに近付く。
常守監視官が征陸さんに呼ばれて行ったのを見届けてから、耳打ちする。
「慎也さん」
「どうした」
「私、そんな笑えてない?」
「表情は変わらない」
「じゃあ、どうして監視官は気付いたの?」
「さあな。勘が良いんだろ」
まあ、と一瞬手を止めて。私の頭を撫でてくれる。
「無理はするなよ」
ふ、と優しく微笑んで、またディスプレイと向き合う慎也さん。本当に、ずるい人だ。
願わくば、ずっと一緒に居たい。
一刻一刻と迫るタイムリミットが、この世界の何よりも、私は怖くて堪らない。
弱気な想いは、煙と共に吐き出した。
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四葉(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます!私の確認不足でした、、ありがとうございます(;_;) (2022年9月22日 23時) (レス) id: 743a108979 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 唐之森じゃなくて、唐之杜です。確認してください。 (2022年9月22日 22時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
ウサギさん(プロフ) - 初コメです。いつも楽しく読ませてもらっています。続編感謝しかないです! (2022年2月20日 22時) (レス) id: daf1a85970 (このIDを非表示/違反報告)
四葉(プロフ) - 凛さん» コメントありがとうございます(;_;)そのお言葉、とても嬉しいです^ ^ これからもよろしくお願い致します(/ _ ; ) (2021年9月21日 22時) (レス) id: 743a108979 (このIDを非表示/違反報告)
凛 - まじで更新ありがとうございます!!いつも楽しく読ませてもらってます( ; ; ) (2021年9月20日 21時) (レス) id: 0efd13f94b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:四葉 | 作成日時:2020年3月30日 23時