執行官ノ哀哭【PSYCHO-PASS】

00 : “過去”に浸るのも悪くない ページ1

『世界がおかしいのか、私たちがおかしいのか。どっちなんだろうね』

『………そうだね』


少年は少女の白髪に指を通し、柔らかく微笑む。


『僕は、おかしい君も愛おしいけどね』

『…きんしんそうかん、ってやつじゃない？それ』

『どこで覚えたんだ、そんな言葉』

『結局答えになってないし』


そう頬を膨らませた少女に、少年は穏やかに笑いかける。そして、言った。


『答えは、僕が必ず見つけてあげよう。近い将来──────きっと』





.





公安局の屋上で、腰まで届く白髪を靡かせる艶麗な女。

女の形の良い唇から、ふと、こぼれた。


─── The future is here.It's just not widespread yet. by William Ford Gibson ───


「アナタは本当にこの将来(世界)で、答え(真実)を見つけられるの？」


目前に広がる世界───2112年の日本に、女は悲しいほど美しい声で投げ掛ける。いや、"日本に"では無い。

たしかに、この日本の何処かに存在する"誰か"に、投げ掛けている。


「………アナタなら、可能なのかもしれない」


硝子手摺に前屈みで凭れかけ、瞳を閉じる。


「アナタも、感じているでしょう？」


開いた異なる双眸は、不気味な光を放っていた。形の良い唇を歪ませ、女は不適に微笑む。









─── この世界は 本当に退屈 ───

H0 : 白髪ノ執行官→

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す