8 ページ10
.
あの後も先生が色々話してたけど
難病、そして完治は難しい…一生付き合っていく病気
その言葉が頭から離れずにいた。
カラカラと車椅子のタイヤの動く音、それとパタパタと車椅子を押す蓮くんの足音だけが響く廊下。
個室のドアを開け静かに車椅子を止めると優しく私を抱き上げてベッドへと移してくれる。
「っ……」
ベッドに横になって布団を被ると涙が止まらなくなった。
「…わぁあああっ」
どんなに悲しいことがあっても泣くことだけはしなかった。だって生きている理由もわからずにいたのだから。
でも蓮くんと出会って…蓮くんの家族と出会って…
生きる理由ができて。
それなのに病気になって
無言の蓮くんが怖かった。だから目も合わせず布団にくるまった。次、話かけられたときはきっと別れ話だ。
せっかく見つけた幸せも、たくさん注いでくれた愛も
何一つなくなるんだ。
また生きる理由を無くすんだ。
考えるだけで溢れて止まらない涙。
でも、違った。
.
.
ぎゅっと………
.
.
布団の上から抱きしめられる感覚。
そして、ぽん…ぽん…とまるで赤ちゃんをあやすかのように背中のあたりをさする大きな手。
蓮「………A？」
この呼び掛けに返事をしていいんだろうか。
返事をしたら…別れようって言われる？
蓮「……A」
「……はいっ…」
蓮「顔…見せて？」
「…ぃや」
蓮「何で笑」
「…ぐちゃぐちゃ…だもん」
蓮「それでもいいから。」
ほらっ。ってバサッと布団を捲られる。
「…ゃだっ…」
蓮「……初めてAの泣き顔みた」
「…へ」
蓮「Aが泣いてるの初めてみた。こんなに付き合ってんのに」
「…初めてこんなに泣いた」
蓮「……一緒に頑張ろ？」
蓮くんの口から出たのは予想もしてない言葉だった。
「どう…いうこと…」
蓮「この病気と一生付き合っていくAを支えさせて欲しい。」
「意味…わかんない」
蓮「だってあと2ヶ月もしたら俺ら本物の家族になるんでしょ？俺の奥さんになってくれるんだよね？」
「………っ……」
蓮「A？」
「…病気の女なんて選ばないで…いいんだよ？」
蓮「病気は関係ない。俺はAがいいの。」
「…ほんとに？」
蓮「ほんとに。難病だったって、完治しなくたって…Aが生きていてくれるならそれだけで十分。」
やっと泣きやみかけたのに…再び涙が溢れて止まらなくなる。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 857人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
na_chu(プロフ) - ヒロさん» コメントありがとうございます！他にも色々な接点を作っていくつもりなのでこれからも楽しんで頂けると嬉しいです！よろしくお願い致します！ (9月13日 22時) (
レス) @page33 id: 655d574789 (このIDを非表示/違反報告)
ヒロ(プロフ) - 何時も楽しく読ませてもらっています。阿部ちゃんの奥さんにはビックリしました。 (9月13日 21時) (レス) @page33 id: 27e2541af5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：na_chu
| 作成日時：2023年9月9日 13時
