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Aは、乱れていた髪を慌てて手ぐしで整えて、俺から離れた。
それとほぼ同時にパタパタと廊下をかける足音が聞こえ、
ガララと開かれた教室のドア。
流星「Aちゃんごめーん!遅なった!」
手を合わせて必死に謝る、流星の姿。
流星「あ、望もおったんや!」
小瀧「ういっす」
“おるならおるって言ってや〜”と、相変わらずの笑顔で俺たちに近づく。
流星「望は、友人ちゃん待ち?」
小瀧「おん」
流星「そうかぁ。…相変わらず仲ええな(笑)」
小瀧「お前らやって」
流星「そんなことないって(照笑)」
恥ずかしそうに笑って、頭を搔く流星。
……たまらなく、嬉しそうや。
流星「ほな……Aちゃん、そろそろ帰ろか…?」
A「うん…そうだね!」
2人はお互い微笑み合い、誰がどう見ても幸せそうなカップル。
流星「んじゃ望、行くな!友人ちゃんによろしく!」
望「おん」
A「じゃあね……望」
小瀧「……ああ」
“バイバイ”
そう小さく手を振って、2人は並んで教室を出ていく。
俺はそんな背中を、見えなくなるまでみおくった。
それからしばらくして、友人が教室へやってきた。
友人「ごめん望くん、お待たせ!」
小瀧「全然!ほな……帰ろか」
あの二人と同じように、俺らも並んで教室を出る。
小瀧「どっか寄って帰らへん?」
友人「うん、いいね!そうしよ!」
小瀧「ほな決まりな」
そう言って、友人の手を取った。
…友人と並んで歩く帰り道、
花屋の前を通りかかった時、友人が声をあげた。
友人「この花……教室の外に咲いてるよね?可愛いなぁって思ってて」
小瀧「ああ……オトギリソウ…って、言うらしいで」
友人「へぇ……そうなんだ!」
小瀧「…買ったろか?笑」
友人「え!いいの!?」
“嬉しい、ありがとう”と、フワッとした笑顔で友人が俺を見た。
「ありがとうございました」
優しい笑顔で見送る店員さんを横目に、
隣の友人が更に嬉しそうに笑う。
友人「大切にするね!」
……ああ、幸せやな。
俺は友人と一緒におると幸せで、
…きっとAも、流星と一緒におって幸せなんやろう。
やから……
そんなお互いの幸せを壊さんように、
俺らはこの想いを、心の奥深くに閉じ込めるんや。
俺と、Aと……
あの時咲いとったオトギリソウの花だけが知る秘密として。
オトギリソウの花言葉
秘密
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作者名:mi | 作成日時:2021年1月25日 18時