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俺も精一杯、笑ってみせる。
小瀧「Aも……流星、優しいし楽しいし、少しアホやけどええ奴やからさ……幸せになってな」
A「…当たり前でしょ(笑)」
お互い見合わせて、フフフ笑う。
…笑ったAを見たら、飲み込んどった気持ちが込み上げてくる。
けど、告げてしまったらそこで、この関係は崩れてまうから。
言葉にしたらいけない、この想い。
それがどんなに辛くて、苦しくて、切ないものなのかは
この気持ちを隠し持っとるオレらにしかわからない。
………Aには、幸せでいてほしいから。
ふと教室の時計を見上げると、短針はまもなく5をさそうとしとる。
17時……
そろそろ、来てもいい頃やな。
小瀧「A、そろそろ…」
そう言いかけた時…
窓から勢いよく風が吹き込み、教室のカーテンが大き揺れる。
A「わっ」
バランスを崩したAが俺の胸に飛び込んで来たその瞬間、
俺らの身体は、風でめくれたカーテンによって覆われた。
…布一枚で作られた、2人だけの世界。
それは、神様が起こしたイタズラやったのかもしれへん。
胸の鼓動が聞こえてまいそうなこの距離に、
……一瞬だけ、この関係を忘れてしまった。
小瀧「………………」
ごめん、友人、流星。
そして………A。
これが、最初で最後やから。
黙ったまま俺を真っ直ぐ見つめとるAは何かを察したように視線を落とすと、
静かに目を閉じた。
俺はそんなAの唇に
………触れるだけの、静かなキスをした。
ほんの一瞬のことやのに、
まるで時が止まったかのように長く感じて。
唇を離すと、僅かに頬を赤らめたAがひどく切ない目で俺を見る。
A「望……」
そうポツリと呟き、俺の制服の袖をキュッと握った。
A「………ありがとう…ごめんね」
その瞬間再び強い風が吹き込み、
俺たちを取り巻いとったカーテンは一瞬にして離れた。
小瀧「……………」
俺は制服の袖掴んどるAの腕をそっと解くと、
ゆっくりと窓の外へと視線を移した。
窓の外では、オトギリソウの花が風でサワサワと揺れとる。
小瀧「…もう行けや。流星、そろそろ来る思うし」
これ以上一緒にいたら、止められなくなる……
そう思って、少しぶっきらぼうに告げたそんな言葉。
A「うん……そうだね」
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作者名：mi | 作成日時：2021年1月25日 18時
