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一目見たときから、此奴だと思った。
忌々しくも、忘れてはならない大切な前世の記憶。
───────私は、愛していた鬼を、女を、命のような奴を、自らの手によって壊した。
運がいいのか悪いのか、その記憶を持って産まれたからには敵陣で塵となったあいつを幸せにしてやらないといけないとそんな一心で数十年生きてきた。
全く、己がこんな吐き気がするような心持ちになるとは。
しかし電話番号を渡したのにも関わらず、待てど暮らせど私の携帯電話が非通知の番号をうつしだすことはなかった。
何故だ。もう2ヶ月は待った。渡したのは10月だぞ?
仕方が無いので、うちの会社の情報網を使って彼女の家を調べることにした。
流石に女子高生の後をつけるのは肩身の狭い思いをするからな。
そして、やっと家を割り出した。
今は、琴枝の後ろにいる。
安心してくれ、後ろにいると言ってもホラー展開でもなければヤンデレ展開でもない。
琴枝もきっと、電話がかけられないのには理由があったんだ。そうだ。
距離をつめて声をかけようとしたその時、彼女は無我夢中で走り出した。
待て、琴枝。
…全くもって、怖がらせたとかそんなことではない。
私は間違えないのだ。
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作者名:白桃。 | 作成日時:2020年1月31日 22時