拾漆 ページ17
「そのくらいにしておやり。この子には、もう戦意は無いよ。」
「ですがお館様…この鬼は鬼舞辻の側近、油断は出来ないかと…」
「悲鳴嶼さんの言う通りです。いくらお館様の仰ることとはいえ、此奴は信用できねェ。」
のこのこと自分たち鬼殺隊の目前に現れた鬼舞辻の側近である桜妃に、柱たちの大多数は裏があることを疑い、それと同時にどこか違和感を感じていた。
「でも…この子、本当に戦う気がなさそうよ…?」
そう甘露寺が呟くと、続けて胡蝶も口を開く。
「確かに、以前私がこの鬼と遭遇したときとは様子が明らかに違いますね。」
そんな二人に、言い返す者、手のひらをかえしたように意見を変える者、特に何も考えていない者。
桜妃と産屋敷耀哉を屋敷内に残して喧しくなっていく柱たちに、彼女は少しばかり声を張った。
「わたくしは、あなたがたに首を斬って頂くために参りました。」
九つの声がぴたりと止まる。
なにを言っているのかと、戸惑いと、不信感と、各人各様の表情が広まった。
「わたくしめは、とてもとても無惨様を愛しております。」
──だからこそ変わって仕舞う前に、狂ってしまう前に、無惨様の前から姿を消してしまいたいのです。
彼女は薄々気づいていた。
記憶がすっぽりと抜け落ちていることも、琴枝という人格を喪ったことで、もうじき自分の精神の均衡がとれなくなることも。
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作者名:白桃。 | 作成日時:2020年1月12日 14時