09.気持ち悪くなんかないの、あなたは ページ9
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……そっか。そうか、そうか。
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「お疲れ様でしたー」
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カズは、1週間限定アンドロイドだった。
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時刻は定時。オフィスから出て、社員証を入り口のところでピッと認証させてゲートを潜る。
カツカツ、と歩くたびに。朝カズが結ってくれたポニーテールが揺れる。
その揺れに酷く苦しさを覚えた夕暮れ。
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「……ん？」
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スー…っと自動ドアを開けて、社員証をカバンに入れたら会社の前で女子社員が「ねえ、あの人かっこよくない？」とひそひそしてる。
その女子社員たちの視線の先を見ると
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カズ「あ！A！」
「かず…」
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すっと手を挙げて、口角を上げて私に近寄ってくるネルシャツを着たカズ。
確か、押入れにあった元カレの服。捨てんのめんどくさかったんだな、多分。
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他の女になんて目もくれず、ただ真っ直ぐに私を見つめてくれるカズ。
優秀すぎる、アンドロイド。
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カズ「夕飯の買い出し行こうと思ったら、ちょうどAの会社の前通ったから」
「あ…、そうなんだ」
カズ「お疲れ様。行こ？」
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ん。って当たり前のように手を差し出してくるカズ。私は少し照れ気味にその手を掴む。
するとカズはまた嬉しそうに、キュッと手を絡めて。恋人繋ぎにして、少しだけ背が小さい私を眺めて「何食べたい？」って聞いてくる。
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卵焼き！って言おうとした瞬間。
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＊「あれ、アンドロイドじゃない？」
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カズをキャーキャー言ってた女子社員の一人が、私たちにわざと聞こえるように言ってきた。
ぴくり、とカズの肩が反応した。
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○「え、アンドロイド？」
＊「あんな顔立ちしてんだからアンドロイドっしょ(笑)」
○「アンドロイドとか気持ち悪！(笑)機械じゃん！」
＊「作りものじゃんね」
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…ぎゅっと握られた手は、熱を持っていない。なんなら冷たい。
それでも「熱」を感じたのは、私の錯覚なのだろうか。
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「…っカズは気持ち悪くなんか」
カズ「いいよ。行こう」
「でも」
カズ「行こう」
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そう言って私の手を引っ張ったカズはやっぱり、冷たかった。
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