24.涙を流さずに泣く方法 ページ24
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水族館で二人っきりになれる場所なんて限られる。
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私たちは屋外に出て、ペンギンコーナーの奥。周りが木々で囲まれていて
恐らく日影スポット。休むために設置されてるベンチのところへと向かった。
ここは人が来ないし、裏口に近いから来たとしても人がいれば大抵戻る。
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この水族館に通い慣れてる私の、穴場スポットだった。
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カズ「暑くないね」
「そうだね」
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お互いにそんな他愛もない会話をして、ベンチに座り込む。
日影になってはいたものの、夏だからベンチが少し暑くてお尻がヒリヒリした。
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二人して肩を並べて、ベンチに座る。
手は繋いだまま。
目の前は、木しかない。
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カズが何かを決心したかのように、口を開いた。
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カズ「…お試し期間は今日を抜かしてあと2日」
「…なに…、いきなり」
カズ「さっき水中トンネルであと何日だっけって考えてたじゃない」
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しまった。
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そうだった、この人は。簡単に人の気持ちを汲み取ってしまう人だった。
「あと2日」
そうなんだ。
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明後日には、いなくなるの。
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カズ「…あーあ！こんなこと言うつもりじゃなかったんだけどなぁ」
「ん？」
カズ「アンタって本当に変わってるね」
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くはは！って笑って、カズは横にいる私を見る。その視線を感じて私も横を向く。
…息を呑んだ。
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「かず…？」
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語彙が見つからないほど
言葉が見つけれないほど
彼は
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カズ「俺は廃棄予定だよ」
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涙を流さずに、泣いていた。
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どくん！と無駄に跳ねる胸。
目の前が真っ暗になって、ミーンミンミン…とどこからか忙しなく蝉の声が聞こえる。
クラクラとするのは真夏の日差しのせいか
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アナタのせいか
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「な…にいって…」
カズ「考えてること筒抜けだって言ってんじゃん」
「そんなの…」
カズ「3日目？ぐらいからAの様子がおかしいってのは感じてたよ。俺優秀でしょ？」
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そう目尻を下げて
アナタは言った。
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