17.理由も言葉もいらない ページ17
.
.
顔色が良くなっても、もしかしたら目覚めないかもしれない。
.
そう思うとなんだか急に怖くなって、カズが目覚めるまで私はカズの隣を離れなかった。
何%まで行けばカズが動くのかすら分からない。わからないから、ずっと隣にいた。
.
でも、カズが動くのはすぐだった。
.
.
地面に仰向けになってるカズ。そんなカズの指先が、ピクリ。と動いて
私は「カズ！」って顔を覗き込むように、まるで押し倒すような格好をしてカズを見る。
.
.
「カズ？カズ！」
.
.
耳の後ろ側を覗き込むと、「残量 10%」となってる。どうやら10%以下になると動かなくなるらしい。
耳の後ろ側を確認してから、もう一度カズの顔を見ると
.
.
カズ「………A？」
.
.
とろん、とした瞳で私をしっかりと認識したカズがいて。
しっかりと目を開けてくれたことに。もう一度「A」と呼んでくれたことに。
嬉しくなって、切なくなって、苦しくなって。
.
.
「……ばか！」
.
涙が溢れてしまったのを、カズに気づかれないように。カズの胸元に顔を埋めた。
するとカズはおぼつかない手つきで、私の頭をふわふわと撫でた。
.
.
カズ「……死んじゃうかと思ったの？俺が」
「……くっそう…、心読めるんだっけ…っぇ」
カズ「…んふふ。そういう機能があるからね……」
.
.
カズ「俺は……機械だから死なないのに…」
.
.
カズ「…Aは優しいね」
.
.
微睡みの中。甘い声で、カズはぽんぽん…とずっと私の頭を一定のリズムで撫で続けた。
死んじゃうかと思った。本当だよ。
カズが、すごい大事なの。
.
.
カズがいなくなっちゃ、嫌なの。
.
.
口じゃ言えない。言葉に表せない。恥ずかしくて、絶対言えない。
言えないから、心の中で精一杯唱えてみる。
分かるんでしょ。私の気持ち読み取れるんでしょ。読み取ってよ。伝わってよ。
.
.
カズ「……A？」
「……」
.
.
カズの呼びかけに顔を上げる。
目と目が合う。私の顔は涙で濡れていた。
言葉はいらなかった。
.
.
キスをするのに、理由はいらなかった。
.
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2352人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
