能面少女と神父さま。 (ページ5)

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「……えーと、エマにご飯やってから食器洗って……」

エマのご飯と水を持ち、庭に出る。

庭とは言っても、ほとんど草原に近く、エマは広い環境でのびのびと育っている。

「エーマー、ご飯だよー」

遠くの方で、わんっという声が聞こえた。

エマは一瞬で私の元まで駆け寄ると、お座りをして、ご飯を待つ体制になった。

「待てだよー待て待て。……ん？」

エマが不思議そうに私を見た。

「(……視界の端に、なんかいたような……)」

気のせいかな、とエマに向き直る。

お利口さんなエマは、待ての姿勢のままご飯の前に座っていた。

「よしっ。いいよ、食べて」

頭を撫でてやると、エマは嬉しそうにご飯にかぶりついた。

……やっぱ、さっきのは気のせいかな。

辺りを見回し、確認する。

特になにがあるわけでもなかったので、教会へと足を踏み出した。

「お嬢さん？ちょ、ちょっと待ってくれないかな……」

足元から聞こえた、疲れの滲んだ男の人の声。

咄嗟に下を見ると、地面に伏した明るい金髪の男の人が倒れている。

男の割にはサラサラで綺麗な髪の毛を、首あたりまでのばしていて、身なりは汚いが神父さまと同格の顔面偏差値を持っていた。

「……えっと」

何を言ったらいいか分からず、言葉を飲む。

「足元から話しかけられたら誰だってびっくりするよね。俺はこの街で大道芸人やってる者なんだけど」

顔だけひょっこり上げてこちらを見た。

綺麗な青い目が私を捉える。

「実はね、全身が筋肉痛で動けないんだ。で、この草原で倒れてたところをこのワンちゃんがここまで連れてきてくれたんだけど……」

そう言うと、勢いよく顔を地面に打ち付けた。

いや、打ち付けたというよりは、首が耐えきれなくなって頭が落ちたと言った方がいいか。

「ごめん、顔あげらんなくなっちゃった。そのまま聞いてくれる？」

くぐもった声で男は言う。

「え、あ……うーんと、とりあえず教会まで運びますよ」

「あ、本当？ありがとー」

男は陽気に言った。