彼が消えて早5年。今私は...12【降谷零・安室透】

456.side降谷 ページ18

Aや3つ子に見送られてやってきたのは先生の部屋らしい。





座ってどうぞと言われたソファに座れば対面するように反対側のソファに先生が座る。







「さて、どこから話そうかな。」





足を組んだ先生は、ニコニコ笑っているもののどこか不穏な気配を漂わせていて。






なんの話しをされるのか、口が開かれるのを少し緊張しながら待つ。






「まず、前回から行こうか。




約6年前、音沙汰なかったAちゃんからいきなり連絡が来たんだ。消え入りそうな声で、妊娠したと思うって。慌てて診察入れてみればご懐妊。しかも3人も。話を聞けば相手は姿を眩ませてると言う。





正直に言うとね、初産でしかも3人で。それを1人で育てる、なんて無謀なことは無い。おろしてもいいと私は提案したんだ。でもね、彼女迷うことも無く「おろしませんよ。」って即答。「彼の...ううん、私の家族を誰1人殺させやしない。」って。いい子を捕まえたね、君は。



それからご両親にも話をして産む事で決着がついたんだけど、これ3つ子のエコーとAちゃんのカルテね。逢生ちゃんの時と同じくらい壮絶だったから。ちゃんとみるように。」






差し出されたそれを手に取ってじっと見つめる。






3つ子の時も逢生の時も、俺は一度も一緒に病院に通えていない為、エコーなども見た事がない。






渡されたそれをみながら、先生のさっきの言葉が頭から離れない。







俺の家族を殺させやしない、そう言ったAはどんな気持ちだったのだろう。勝手に何も言わずに消えた俺の事を考えての発言。彼女はどこまでも俺の事を考えてくれていた。







嬉しい。嬉しいけど、それに返せていない自分が悔しい。







エコーをめくり、カルテに目を移す。









そこには、Aの想像を絶する妊娠期の様子が書かれていた。

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