episode 1 ページ2
side.クズ子
彼氏に振られた。
理由は最後まではぐらかされたまんまだったけれど、どうにもむしゃくしゃする。
こんな時は酒に頼るしか、と大して強くもないのに思ったりもして。
適当に見つけた入ったことも無い居酒屋の暖簾をくぐり、適当なカウンター席に座る。
白髪の男が隣の席で潰れているけれど気にしない。
「いらっしゃい。
別嬪さんが一人で、珍しいこともあるもんだ」
おしぼりとお通しを出しながら、店主が話しだす。
「振られちゃったからね。ヤケ酒ってやつ」
「こーんな別嬪振るなんざ、そいつァ勿体ねェ」
「ほんとよねぇ。どこかにイイ男でも落ちてないかしら」
わざとらしくため息をつき、芋焼酎の水割りを煽った。
「この街の男にそんなもん期待しちゃァ駄目だ。
くたびれた金欠の天パぐらいしかいるまいよ。・・・な、銀さん!」
突然隣の席で潰れていた男に店主が話をふり、白髪頭がのそりと起き上がった。
「あぁん?誰が天パだコラ。
俺のコレはな、スーパーウルトラキューティクル天然パーマネントなんだよ」
「結局天パじゃねェか」
と、そこでやっとそいつと視線が交わった。
( ───顔は、・・・うん合格。 )
目こそ死にきってやる気はなさそうだけど、男前の部類に入るであろうこの男。
「んだァ?この別嬪な姉ちゃん」
「彼氏に振られちまったんだとよ」
あ、言っちゃうんだ親父さん。いいけども。
「へェ。で、ヤケ酒ってやつかい」
「まァそんなとこ。
もう顔も思い出せないわ」
「言うねェ」
事実そうなのだ。
確かに彼に惚れていたはずなのに、今となってはどんな顔をしていたのか思い出せない。
考えてみれば歴代の男、ほぼ全員そうかもしれない。
「おっちゃん、日本酒ちょーだい。冷で」
「お、いけるクチか?」
実のところそこまで強くはないけれど、今日はなんだか酔いたい気分だ。
「おいおい呑みすぎんなよ、俺ァ知らねェぞ」
「うるさいわね、奢ってやるから黙ってなさいよ」
「オイおっさんココの酒ありったけ持ってこい」
「最低だなアンタ」
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作者名:とむ子 | 作成日時:2018年10月19日 4時