17話 ページ18
普段あまり表情の変わらない彼の瞳が明らかに翳った。
それを私はしっかりと見た。
忘れられない。
きっと彼なりに抱えてるものがあるんだろう。
それなのに、私は、自分ばかりが不幸だと、消えたいと。
誰にも必要されてないと、勝手に思い込んでいた。
私がアルベドさんと逆の立場だったら、きっと面倒になって放っておいてただろう。
それなのに、こうして面倒を見て、向き合おうとしてくれて。
私はなんて馬鹿なんだろう。
逃げて、消え去って、何もかもなかったことになんて、本当は出来ないのに。
消えたって、私の中の苦しみが完全に消えるかも分からない。
もしかしたら、大好きな人達に、苦しみを分け与えてしまうかもしれない。
その恐ろしさに気付き、ゾッとした。
『っ......』
謝らないと。
思い立った時には、まだ少し痛む身体も気にせず、部屋から飛び出していた。
部屋を出たところで気付く。
この家の間取りを知らないことに。
ひとまず手当たり次第に探すこととする。
部屋数がそこまで多い訳では無いが、勝手に開いていいものか.....等の葛藤の末に、アルベドさんが居るかだけを扉を少し開けて確認することにしたら、逆に時間がかかってしまう。
いままで、誰に嫌われようが、妬まれようが、恨まれようが、さして気にはならなかった。
元々誰からも愛されてないから。
でも何故だろう、彼には、アルベドさんには嫌われたくない。
悲しい顔をさせたくない。
傷付けたくない。
こんなにも他人の事で頭が支配されたのは、いつ振りだろう。
まだ私が幼い頃、ジン団長に風邪を移したとき以来かもしれない。
そんな過去のことを思い返していると、ガラス越しに人の姿の映った扉をみつける。
磨りガラスのため、誰かは分からないが、背丈からしてアルベドさんだろう。
ドアノブに手をかける。
.....どうしよう。無視されたら。
居ないものとして扱われたら。
怒鳴られたら。
____置いていかれたら。
脳裏に、失望したような目で私を見下ろすアルベドさんが、父が、母が、思い浮かぶ。
『あ.....や......やだ、ごめんなさい。っ、置いてかないで。』
脚から力が抜け、目からはたくさんの涙が出る。
しゃがみ込んだ衝撃で扉が空いてしまう。
薄暗い廊下に一筋の光が差し込む
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作者名:ウォシュレット | 作成日時:2021年12月7日 6時