Symphony11【病系】【短編集】

. ページ21

.

赤side









いつも通り賑やかな撮影現場に、ぽつんとひとり静かなさとみくん

疲れてるのかなとか、今ちょっと気分的に落ちてる時なのかなとか。この活動してればそりゃああることで

空元気でも、動画に元気がないように映らなければ良いだけ


冷たいようだけれど、そういう仕事だから




心配はするけど、過保護にはならない

だって、さとみくん大人だもん。俺らの何倍も。


横目でさとみくんを気にしながら、そんな自問自答をした






.






「 じゃあそろそろ… 」とスタッフさんの声に、よし。とスイッチを入れて立ち上がる


用意された椅子に向かえば、着いてこない人が1人




「 さとみくん？ 」

「 …… 」


こめかみあたりを抑えて、突っ立ってるさとみくん


頭痛いのかな？立ちくらみ？

確かに顔色はあまり良くないし、少し窶れている気もするけど




「 さとみくんやるよー！ 」

「 …、 」

「 さとみくん大丈夫？ 」


るぅとくんが彼の元にテクテク歩いていって肩を抱き顔をのぞき込む




「 、1回座る？ 」


俺らの声掛けに、全く反応しない。まるで声が聞こえてないみたい



「 さとみくん？ 」


なんかおかしい。さとみくんの綺麗な瞳に全く光が点っていない

靄がかかっていて、視点が定まらないような感じ







その様子に少し怖くなって、椅子に座らせたさとみくんの様子を見守る



「 ねぇ、さとみくん。答えてよ 」


やれるのか、もう中止にした方がいいのか

今日は何本も撮影をしようとしていたから、なるべく予定通りに進めたい




「 … 」


ころちゃんが何度も彼の名前を呼ぶけど、答えてくれない

さとみくんの細い手を握る。さとみくんの手は、僅かに震えていた








「 さとみくん、ねぇ 」



「 ………ｯ、うるさぃ！黙れ！ 」




俺の手を振り切ったと思えば、大声で叫んださとみくん


そんな突然の出来事に、俺らは言葉が出なかった








「 …ｯ、、、…帰る 」


ふっ、と素に戻ったようなさとみくんは、そう呟いて立ち上がり、荷物を持って出ていってしまった









「 ……ぇ、？ 」

「 僕、そんなうるさかった…？ 」



怯えた表情で、呟いたころちゃんの言葉は誰にも拾われず消えた


さとみくんのあんな姿見るのが初めてで、みんな戸惑っていた








.

.→←141_瞳【桃×all】*

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す