Symphony11【病系】【短編集】

. ページ18

.

橙side









「 、兄ちゃんもうおらへんか 」


明け方まで電話してたものだから、お昼前まで眠ってしまって。起きたら当たり前だがもう兄ちゃんは居なかった


社会人っていつも朝から晩まで外で働いててほんまに偉いと思う

大学生の俺は、たった90分の講義に行くだけで面倒くさいと思うのに





俺が大学に通えてるのは兄ちゃんのおかげやし、俺が少しのバイトで遊び呆けていられるのも兄ちゃんのおかげ

昔からそんなに体が強いわけじゃないのに、無理して働き続けてくれてるのも知ってる


だから俺は、家のことは全部やるって誓った





料理して洗濯して、部屋を片付けて

兄ちゃんはホコリとかに弱いから、なるべく部屋の掃除は徹底的にな。


なんて家事に追われているとバイトの時間になり慌てて家を出た





［ 今日の夕飯はカレーやで。気をつけて帰ってきいや ］


バイトの前に、兄ちゃんにLINEを入れる

最近兄ちゃんすごく疲れてそうやったから、兄ちゃんの大好物で元気つけてあげよう





＿





バイト前から準備してたカレー

最後の仕上げに火をつけ隠し味を入れて、グツグツと煮込む




ガチャっと家の扉が開く音がして、兄ちゃん帰ってきた。とちょっと嬉しく思う

するとドタドタバタンっと大きな音が聞こえて、慌てて廊下に飛び出した




「 、ぇ？兄ちゃん！？ 」

「 …っけほっけほ、、ﾋｭｰﾋｭ、だいじょぶ、、 」


廊下の壁にもたれながら重たい足を1歩1歩前に進める兄ちゃん

酷い顔色で苦しそうに咳をする兄ちゃんは、どうしたって大丈夫には見えない




「 、だいじょぶ…ｯｾﾞｰｪ、、げほけほ、、 」

「 1回座ろ？な？薬もってるよな？ 」

「 …いぃ、大丈夫…ごほっこほ 」


何を強がってるのか、弱々しい声で言う兄ちゃん


いつか俺の前で喘息発作を起こした兄ちゃん。俺は何も出来なくて、会話もままならない兄ちゃんが怖くて泣きじゃくったことがある

その時から、兄ちゃんは俺の前で辛い姿を見せなくなった

もう俺だって成人してるんやで？酔っ払いの看病だってできるんや。兄ちゃんの喘息発作の看病なんて余裕に決まってるのに、兄ちゃんはまだ俺をあの時のままやと思っている






「 、げほっけほ…ｯﾋｭ、、ｺﾞﾎｯｺﾞﾎ 」


床にしゃがみこんで動けなくなってしまった兄ちゃんに内心焦る




「 薬……。バッグ開けるで 」


バッグの中から、巾着袋を見つけてその中に入っていた吸入器を彼に渡した







.

.→←140_いつまでも子供じゃない［桃×橙］*

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す