ほっとここあ【短編集】

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砂浜に流れ着いていた流木に座る




『 これ、持ってきちゃった。お金折半だったのにAちゃん全然飲んでないでしょ 』


そう言って、ポケットから取り出されたのはお酒だ






「 ありがとう…よく見てるね 」

『 うん、見てるよ 』



ふふって2人で笑いあって海を眺める


月明かりが海に反射してキラキラと揺らめいている









『 Aちゃんはさ、そのままでいいと思うよ 』

「 え？ 」

『 ちょっと無理してたでしょ 』

「 …… 」

『 そんなところも可愛い 』

「 るぅとくん？ 」



彼の持つスマホのライトと、月明かりだけが頼りのこの暗い砂浜で

彼の表情はあまり見えない







『 ぁ、待って僕今変なこと言った？w 』

「 え、いや… 」

『 ごめん！ちょっと酔ってるみたい…。ほんとごめん 』

「 大丈夫！変なことも言ってなかったよ 」

『 ﾊﾊﾊｯ、本当にAちゃんって気遣い上手だね 』




人に好かれたくて、人の顔色ばっか伺って

人に合わせてばっかで自分の意思なんて主張したこともない



そんな自分に嘘ついてばっかの強がりな私を



るぅとくんは 気遣い上手 って言ってくれた







それだけで、目頭が熱くなるくらい嬉しかった









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『 ……、ねぇ、手握ってもい？ 』

「 …ぇ？ 」

『 ダメ…かな？ 』


なんの意図があるのかは分からない

付き合ってもない男性と手を繋ぐのがいい事なのかなんて分からない





「 …いいよ 」


けれど、断続的に聴こえてくる穏やかな波の音が私をいつもより少しだけ素直にしてくれる





2人で手を繋ぎ、言葉を交わすことなく海を眺める









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どれくらい時間が経ったのだろう



先程まで海に反射し揺れていた月は雲に隠れてしまっていた












「 そろそろ、戻る？ 」

『 …、戻りたい？ 』

「 ……、いや、もう少しだけ 」

『 、うん 』




胸がドキドキして、今この空間が心地よくて


ずっとここにいたいって思えた




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