ほっとここあ【短編集】

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人に勧められるものとか試してみようって思ったこと無かったのに、私は素直に動画をタップしてみた




キラキラで、華やかな雰囲気


赤い、耳のついた、人間



1番上にあった【MV】をタップしてみる







しばらく耳にすることのなかった陽気な音が流れてくる


優しくて、可愛らしい綺麗な歌声




気がついたら曲が終わっていて、もう1回聴く


考えるより先に、手が勝手に動いていた









画面に何故か雨が垂れて、自分が泣いていることに気がついた









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画面をスクロールしてみる




「生まれてから、」そんな動画が目に付いた







タップしてみる


さっき歌っていた声とは違う、落ち着いていて


どこか聞き覚えのある声がした






30分弱ある動画


気がついたら見終わっていて、タオルは絞れるくらい濡れていた








窓から見える空を見る



いつもよりほんの少しだけ青く見えた










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あれからあの青年には会えていない




その代わり、私は莉犬くんという人に出会った









私は病院を退院して、生きている



莉犬くんがいるから、ﾀﾋろうとするのは辞めると決めた






その言葉通り、私は彼のおかげで今こうして生きている



前を向こうって、空は青いんだって気がつけたんだ











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凄い速さで流れていくコメント



たった1分で数千のいいねがつくSNS






私より、彼のことを好きな人はきっと沢山いるだろう



私のように、彼に救われた人は沢山いるだろう







そのたった1人であったとしても




私は、彼に今日もメッセージを送る














［ 莉犬くん。お誕生日おめでとうございます。］












たったそれだけ、




彼の目につくかも分からないその一文に、




全ての想いを込めて＿＿＿＿





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