. ページ38
DN「…Aだって泣かないのに」
JH「泣けないんだよ、多分」
DN「泣けない？」
JH「我慢してるんじゃなくて、どうしたらいいかわかってないだけ」
泣き方をよく、知らないから。
閉じていたはずの瞳がうっすらと開いて、何もない天井を静かに見つめる。
ヒョンは時々こうやって、Aのすべてを知っているかのように話すことがあった。全部を知ることはできないとわかっていても、誰かに言い聞かせるみたいにこうやって口にする。
自分にとっては、それが事実であるようにと祈るような声に聞こえていた。
それでもこのとき、たしかに本当のことなのかもしれないと考えついたのは、あの日のAが微笑んでいたからだ。
ホシヒョンが怒鳴ろうがスングァニヒョンが泣こうが、あの瞬間のあの瞳は、泣きもせずただ静かに佇んでいたのを、自分はこの目で見たから。
DN「…子どもみたいだね」
JH「人間のふりしてるだけだもん」
DN「そもそも人間じゃないんだ」
JH「なんか、住んでそうじゃん。空の上とかに」
ぼんやりと話すヒョンの口ぶりに、全てを共感できたわけではなかったけど、確かにと妙に納得してしまった部分もある。
空の上なんて言葉を聞いて、まだ練習生だった頃、宿舎をはじめて抜け出した日のことを思い出していた。
あの日も月にいるとか何とかよくわからないことを言い連ねていたから、その全部がいつもの冗談だとわかってはいたけど、Aならやりかねないような気がしていたのもまた事実で。
本当に月に行ってしれっと戻ってきそうだし、あの日言っていた宇宙旅行も本気で計画していたりするのかもしれない。
一瞬でもそう思えてしまうぐらいには、Aはひとりで何でもできてしまう人だったから。
0を1に変えられる人。言うならそんなところだと思う。
JH「だから、俺からしたら子どもっていう部分ではおまえもAも大して変わらないよ」
DN「…そんな、自分だけ大人みたいに」
JH「間違ってはないじゃん」
だから、泣きたいなら泣いていいんだよ。
やけに穏やかな声が隣にあって、そうしてやっと目が合った。
心配そうに覗き込む瞳に、自分の顔が浮かんでいる。
つらいのは、その視線がほんの少し揺らいでいるのを、ヒョン自身が気づいていなかったことだった。
DN「知ってますよ、泣き方ぐらい」
JH「ディノまで知らなかったらもっと困るよ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 750人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
をる(プロフ) - Kさん» コメントありがとうございます😭！！拙い文ですが楽しんでいただけているようで本当に嬉しいです。これからも見守っていただけたらと思います、ありがとうございます🙇 (4月3日 19時) (
レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - いつも読ませて頂いております！素敵なお話ありがとうございます。無理なさらずこれからも応援しています☺︎ (4月3日 11時) (レス) @page25 id: 64e289b1e8 (このIDを非表示/違反報告)
をる(プロフ) - こころさん» わー！！コメントありがとうございます😭本当に励みになります、嬉しいです。この先も楽しんでいただけたら幸いです！ (4月3日 2時) (レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 書き方がすごく好みです❤︎これからも楽しみにしています！ (4月3日 2時) (レス) @page25 id: ff02d19e18 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：をる | 作成日時：2024年3月25日 3時
