泣かない僕と、泣けないきみ｜2016｜DN. ページ36
Aの声が出なくなった。
一概に "出なくなった" と言っても全く話せないわけでもなくて、なにを言ってるのかは理解できる程度の掠れた声しか出せないっていう感じ。
綺麗で優しく響いていたあの声の面影はどこにもなくて、痛々しく息を含んで喉を引っ掻いたような小さな声で言葉を紡ぐから。
だから会話はできても、歌を歌ったりパフォーマンスをしたりするのは当分できない。
そうしてAの活動休止を、心の整理もつかないままに余儀なく言い渡された。
医師の先生が言うには "ストレスや不安が原因じゃないか" とのことで。
結果的には病名にも心因性なんて書いてあって、声帯や筋肉にも特に損傷はないらしいけど、療養するためにしばらく入院する必要がある、って。
倒れたときに頭や身体を打ったみたいで、その傷を治すのにも時間がかかるだろうから、一緒に活動をするのは厳しいって。
それを告げられたときのヒョンたちの顔が、いつまで経っても頭に張り付いて離れないまま、数日が過ぎた。
JH「Aのこと、ディノは怒らないんだ」
ある日突然、ジョンハニヒョンからそんなことを言われた。
なんの前触れもなく、本当に急に。
視線を移すと、隣で腰掛けたヒョンがどこか遠くを見つめている。
疲れたときのヒョンはいつもこんな感じだった。
充電が切れたみたいにソファに身体を投げだして、背凭れに上体を預けながらぼんやりと項垂れる。
今自分が目にしている光景も、これと全く同じものだ。
そんなヒョンの頭を時々撫でつけていたAの優しい手の記憶が、この数日で懐かしく感じるようになってしまったのが、自分は少し悲しかった。
その中でいつもと違っていることといえば、ヒョンの声に力が籠っていないような気がしたこと。ほんの少しだけ。
DN「怒ってどうにかなるんですか」
JH「ならないけど、怒りたくもなるじゃん」
DN「ヒョンも怒らなかったでしょ」
JH「やー、それとこれとは別だよ」
俺はディノに聞いてるの、なんて濁すようなよくわからない返事。
"怒りたくもなる" なんて言うから、ヒョンもそんな気持ちだったんだろうかとこのとき一瞬考えた。
それでも多分、Aには怒らないんじゃないかと思う。
怒っても喚いてもどうにもならないっていうことを、ヒョンは痛いほどわかっていたはずだから。
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をる(プロフ) - Kさん» コメントありがとうございます😭！！拙い文ですが楽しんでいただけているようで本当に嬉しいです。これからも見守っていただけたらと思います、ありがとうございます🙇 (4月3日 19時) (
レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - いつも読ませて頂いております！素敵なお話ありがとうございます。無理なさらずこれからも応援しています☺︎ (4月3日 11時) (レス) @page25 id: 64e289b1e8 (このIDを非表示/違反報告)
をる(プロフ) - こころさん» わー！！コメントありがとうございます😭本当に励みになります、嬉しいです。この先も楽しんでいただけたら幸いです！ (4月3日 2時) (レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 書き方がすごく好みです❤︎これからも楽しみにしています！ (4月3日 2時) (レス) @page25 id: ff02d19e18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月25日 3時
