影も踏めない暗闇で｜2016｜DK. ページ30
＿＿Aが、目を覚ました。
収録を終えたあとに告げられたマネヒョンのその一言で、また瞳が揺らぎそうになるのをその場でどうにか堪えていた。
突如強いられた、Aのいないはじめてのステージ。
いつも目にしたあの後ろ姿がどこにもないのが心を締め付けていくばかりで、うまく声も出なくて、笑顔もきっと不自然で。
それは多分、他のみんなも同じ。
これならいっそ、舞台に立たないほうが良かったのかもしれない。
そんなふうに思えてしまうくらいには、目も当てられないものだったと思う。
スタジオを出て駐車場へ向かうまでの途中で、またスングァニがぽろぽろと泣き出すのを見て、自分は何も言えなかった。
声を押し殺すような嗚咽と鼻水を啜る音が、やけに耳に残っている。ひどい雨は知らぬ間に弱まって、あちこちに大きな水溜まりができていて。
いつ止むんだろうと車窓から空を見上げる。車の中でも、誰も口を開かなかった。
起きているのに、言葉はない。一人でいるみたいだと思った。
前にいたスンチョリヒョンが病室の扉をゆっくりと開いたとき、隙間から副社長の後ろ姿が見えた。
その背中越しに、見慣れた短い黒髪に白の包帯がちらつく。
倒れるときに頭を打ったんだろうな。
周りに誰もいなかったせいで。抱きとめてあげられなかったせいで。
やっと目にしたその姿があまりにも変わり果てていたから、どうしていいかわからなかった。
ただ此処から逃げだしたくて、現実のすべてに目を瞑っていたくて、どうしようもなく、その先を目に映せないまま。
そうして誰も動けずに立ち尽くしていたら、気がついたらしい副社長が、静かに靴先を此方に向けた。
何を話していたかなんて聞きたくもないけど、ある程度の予想くらいはつく。
事実確認なんてするまでもなく、あんなの嘘でしかないっていうのに。
そうして立ち去る直前に、副社長は扉の前で言い放った。
あとはきみたちで話しなさい、って。ひどく冷静な声だけを残して。
それから、決して広くはない病室に置かれたベッドの上で、身を起こしたAの姿を見た。
白すぎる肌と黒い髪に、いやに映えた包帯の白が目につく。
それでもその瞳はいつもと変わらず綺麗に瞬いて、平然と此方を見上げてくるのが、今日ばかりは本当に変だと思う。
他人事みたいに思っているんだろうな、きっと。
とことん自分に興味がないAのことだから。
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をる(プロフ) - Kさん» コメントありがとうございます😭！！拙い文ですが楽しんでいただけているようで本当に嬉しいです。これからも見守っていただけたらと思います、ありがとうございます🙇 (4月3日 19時) (
レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - いつも読ませて頂いております！素敵なお話ありがとうございます。無理なさらずこれからも応援しています☺︎ (4月3日 11時) (レス) @page25 id: 64e289b1e8 (このIDを非表示/違反報告)
をる(プロフ) - こころさん» わー！！コメントありがとうございます😭本当に励みになります、嬉しいです。この先も楽しんでいただけたら幸いです！ (4月3日 2時) (レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 書き方がすごく好みです❤︎これからも楽しみにしています！ (4月3日 2時) (レス) @page25 id: ff02d19e18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月25日 3時
