死に損ないと大馬鹿者｜2016｜SC. ページ21
長い廊下を一直線に走っていた。
走らないでと注意を受けても、湿った髪が頬に張り付いてもそのまま走り続けて、ばたつく足でとある病室を目指した。
ざあざあと降りしきる雨の音が窓の外で響く。
止む気配はないどころかむしろ強まってくる。ひどい天気だった。
そうして半ば駆け込むようにして一心に走り抜けていたとき、その病室から誰かが出てくるのが見えた。
ふと目が合ったその人は、居場所を知らせるようにひらりと手を振る。頭にタオルを被ったジョンハニだった。
SC「…Aは」
JH「ちゃんと中で寝てる」
SC「……まだ起きてない？」
JH「うん」
SC「………」
自分でも驚くほど長い溜め息だった。
強張っていた全身から糸が切れたみたいに力が抜ける。その場にへたり込みそうになるのをなんとか堪えて、壁際のベンチシートに凭れ掛かるように手をついた。
ぐったりと腰を下ろしたら、上着が肌に染みて張り付くのをいやに感じた。汗なのか雨なのかわからないそれが、衣服を重く引きずっている。
ほぼ倒れそうな自分を見ながら、ジョンハニは自分の隣に腰掛けた。
その表情は特段暗いわけでもないけど、やけに遠い目をしていた。乾ききっていない水分の含んだ黒髪が、白いタオルの下で静かに揺らぐ。
JH「死にそうでしょ。俺もそうだった」
SC「多分もう死んでる」
JH「ああ、そうかも」
笑えないねって壁に背を預けたジョンハニが、生気のない遠い目で意味もなく肯定するのが見るに耐えなくて息苦しかった。
自分も人にどうこう言えるほどの立場でもないし、ハニもきっと自分に対して同じことを思っているんだろうけど。
マネヒョンに傘を持たされたっていうのに、結局誰もがなりふり構わず雨に打たれてしまったせいで、13人全員でずぶ濡れになりながら探し回って。
マネヒョン伝いにAが見つかったって連絡が来たときは、その場で心臓が止まりそうだった。
それよりもっとひどかったのは、"病院に運ばれた" なんて言葉が立て続けに聞こえてきたとき。
もう少し遅かったら危なかったかもしれないなんて、ひどく冷静な先生の言葉を耳にした、あのとき。
凍てつくように指先が冷えていくあの感覚が、今も鮮明に残ったままでいる。
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をる(プロフ) - Kさん» コメントありがとうございます😭！！拙い文ですが楽しんでいただけているようで本当に嬉しいです。これからも見守っていただけたらと思います、ありがとうございます🙇 (4月3日 19時) (
レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - いつも読ませて頂いております！素敵なお話ありがとうございます。無理なさらずこれからも応援しています☺︎ (4月3日 11時) (レス) @page25 id: 64e289b1e8 (このIDを非表示/違反報告)
をる(プロフ) - こころさん» わー！！コメントありがとうございます😭本当に励みになります、嬉しいです。この先も楽しんでいただけたら幸いです！ (4月3日 2時) (レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 書き方がすごく好みです❤︎これからも楽しみにしています！ (4月3日 2時) (レス) @page25 id: ff02d19e18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月25日 3時
