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「スニョンイはさ」
HS「うん」
「自分が書いた歌で誰かを殺したとしても、書き続けようと思う？」
まっすぐに注がれた視線のおかげで何か言いたいことがあるんだろうとわかってはいたものの、いきなりそんな話を投げかけられたものだから、答えようにも難しくて数秒間の沈黙が流れた。
Aはいつもそうだった。とうに知っていたことだけど、未だにこうして意図を飲み込むのに時間を要することがある。
当の本人は大きな瞳を丸くさせて、此方の答えを待ち続けているわけだけど。
HS「……え、なにが？」
「たとえ話」
たとえばなし。
言えばそれだけのことだけど、殺すなんて物騒な言葉がAの口から聞こえてくるのが、不思議だったから。
その言葉のあとに、ほんの少し不安そうに震えた睫毛が一瞬見えたから。
そのとき頭の中に少しだけ思い浮かんだのは、
これが本当にたとえ話なのかどうかっていう、憶測に過ぎないそんな話。
HS「…うーん？わかんないけど、書くんじゃない」
「なんで？」
HS「おれはべつに、Aの歌で死んでも幸せだなって思うから」
静かに見開かれた綺麗な瞳を見た。
自分の告げた言葉ひとつひとつに、信じきれないといった目が、零れ落ちそうなくらいにぐらりと揺らぐ。
自分の言葉に嘘はなかった。
これは紛れもない本心で、何なら抱くのも初めてではない想いのひとつで、むかし、優しい声で空をなぞるように歌を紡いでいたその姿を見て以来、ずっと考えていたことだった。
花を手向けるようなその歌で、どうやって人を殺めると言うのか。自分には、そっちのほうがよくわからない。
HS「あんなに優しい音で殺される人って、いないと思うんだけど。おれは」
「…伝え方を間違えたら、殺すこともあるかもしれない」
HS「間違えないじゃん、Aは」
Aは、ただしい人だから。
自分の言葉を聞いて、何度か瞬いたあとにそっと伏せられた瞳と、揺れる黒髪を静かに眺めたままでいる。
ただしい言葉を選ぶ人。穏やかに歌を紡ぐ人。
すべてをその優しさで包み込むように、誰も置いていかないように、手を伸ばしてくれる人。
自分はそれを、この目で見たから。
こんなに柔らかく触れる歌とともに眠りにつけたなら、きっと何が起きようと、幸せだったとすべてを抱きしめられるんじゃないかって、そんな気がしていたから。
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をる(プロフ) - Kさん» コメントありがとうございます😭！！拙い文ですが楽しんでいただけているようで本当に嬉しいです。これからも見守っていただけたらと思います、ありがとうございます🙇 (4月3日 19時) (
レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - いつも読ませて頂いております！素敵なお話ありがとうございます。無理なさらずこれからも応援しています☺︎ (4月3日 11時) (レス) @page25 id: 64e289b1e8 (このIDを非表示/違反報告)
をる(プロフ) - こころさん» わー！！コメントありがとうございます😭本当に励みになります、嬉しいです。この先も楽しんでいただけたら幸いです！ (4月3日 2時) (レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 書き方がすごく好みです❤︎これからも楽しみにしています！ (4月3日 2時) (レス) @page25 id: ff02d19e18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月25日 3時
