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そうして、マネヒョンに持たされた一本の傘の下を身を寄せ合って歩いていた、そのとき。
強まる雨音の向こう、遠くのほうで何か声が聞こえたような気がして。
ふと視線を見やると、小さい何かが動いているように見える。
ぐっと目を凝らしながら、ふと足を止めた。
それに気づいたジョンハニヒョンが、同じように足を止める。
存在を知らせるように動き回る、真っ黒の何か。
じっと目で追っていたら、一瞬、長い尻尾がはっきりと見えた。
SG「…あ、猫だ」
JH「猫？」
SG「うん」
JH「…公園だね、ここ」
ジョンハニヒョンの靴先が公園のほうへ向いたから、気づけば引き寄せられるように二人でその中へ足を踏み入れていた。
どうしてかはわからないけど、多分ほとんど勘みたいなもので、呼ばれているような気がしたから。
よく耳を澄ませると、誰かを呼ぶみたいに、必死に声を上げる枯れそうな鳴き声が聞こえてくる。そこは小さな公園だった。
濡れそぼった錆まみれの遊具。
もうしばらく誰も使っていなさそうな、古びた滑り台やブランコなんかが聳え立っている。
天気のせいもあって、より一層寂しく見えた。遊具も木々も、濡れた砂場も。
妙な雰囲気の公園の中。しばらく進んで行ったところで、あることに気づく。
遊具よりももっと奥のあたり、木々の影に敷かれた何かの周りを、小さな猫が彷徨いているのが見えた。
その一瞬、首が絞められたみたいに、喉の奥が締め付けられる。
息ができなくなって、落ち着いていたはずの鼓動がまた音を立てて早められていく。
震えた唇では、何を言葉にすることも叶わなかった。
濡れた木陰と草むらの中で、横になった黒髪と、力なく項垂れた細い手首を目にしたから。
ああ、あれはAだって、すぐにわかった。わかってしまった。
走り出したヒョンの背中が、ゆっくりと潤んで歪んでいく。
何もかも濡れ去って、力が抜けて膝をついた。
いつの間にか傘すら手放して、雨に打たれていく身体が冷えていって。
何もかもが遠のく。ヒョンの声も黒猫も、木陰も遊具も、Aも。
ああ、どうして。どうして連れて行こうとするの。
僕の大切な人を、どこにも連れて行かないで。僕たちから何も奪わないで。
あのとき、離さないって、約束したのにな。
焼けるように熱くせりあがる喉元で、何もできないまま。
止まない雨音と、猫の鳴き声がやけに耳に張り付いていた。
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をる(プロフ) - Kさん» コメントありがとうございます😭！！拙い文ですが楽しんでいただけているようで本当に嬉しいです。これからも見守っていただけたらと思います、ありがとうございます🙇 (4月3日 19時) (
レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
K(プロフ) - いつも読ませて頂いております！素敵なお話ありがとうございます。無理なさらずこれからも応援しています☺︎ (4月3日 11時) (レス) @page25 id: 64e289b1e8 (このIDを非表示/違反報告)
をる(プロフ) - こころさん» わー！！コメントありがとうございます😭本当に励みになります、嬉しいです。この先も楽しんでいただけたら幸いです！ (4月3日 2時) (レス) id: 8d863670a1 (このIDを非表示/違反報告)
こころ(プロフ) - 書き方がすごく好みです❤︎これからも楽しみにしています！ (4月3日 2時) (レス) @page25 id: ff02d19e18 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月25日 3時
