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「…今みたいにスングァニが教えてくれるから、大丈夫かな」
SG「もし僕が教えなかったらわからないままじゃん」
「そんなことないよ」
SG「なんで？」
裾を握った手の甲に、徐にAの掌が重なる。
冷え込む夜には不自然なくらいに温かいそれが、轟く鼓動の音を知らせるかのように優しく触れて、そっと指先を絡めとった。
その体温がじわりと染み出すのを感じた時、ああ、この人もちゃんと生きてるんだって、そんな当たり前のことが頭の中に浮かんでばかりいる。
「スングァニは絶対に、離さないでいてくれるでしょ」
消えそうだった影を繋ぎ止めたのは間違いなくこの掌で、それをきみもきっと望んでいたんだとわかっていたくて。
息を吐くように優しく響いたささやかな言葉を、ただ耳に残そうとした。
どこか遠くを見つめてばかりだったその目が、まっすぐに此方を捉えている。月を浮かべた海のように潤む瞳が鮮やかで愛おしくて、どうしようもないままその中に呑まれてしまいそうだった。
気恥ずかしいくらいに優しく微笑むきみから、目を逸らしたいのに逸らせないせいで。
SG「……迷子になっちゃえばいいのに」
「探しに来てくれないの？」
SG「…もう、しょうがないなぁ」
「うん。しょうがないんだよ」
だから連れ戻してね、スングァナ。
そう言う穏やかな声が、いつまでも褪せなければいいと考えて。
繋ぎ止めた掌により一層力を込めて、離れないようにぎゅっと引っ張った。
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
