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少しの間黙り込んだあと、彫りの深いその顔が、何かを思い出したように表情を変えた。
はっと上がった眉を見て、ドギョミとディノが首を傾げる。
VN「ああそれ、猫の話だよ」
DK「……ねこ？」
VN「Aの、実家の飼い猫」
DN「ボノニヒョン、なんでわかるの？」
VN「なんでって、よく聞くから。猫の話」
モモとスズとナナって言うんだって。
馴染みのない3つの名前がボノニの口から飛び出したとき、部屋中が静まり返って誰も何も言えなかったのは、ボノニ以外の全員がその事実を初めて耳にしたからだった。
それも、よく聞くからって。
ボノニだけが、知っていた。Aが実家で猫を3匹も飼っていたことを。
開いた口が塞がらないといった様子のドギョミと、首を傾げたままのディノと。泰然としたボノニの表情はそれでも崩れることはない。
MH「それ、日本語？」
VN「そう。3匹ともオスだったのに、お祖母ちゃんが勘違いして
女の子の名前つけちゃったって」
DK「まって、なんでそんなに詳しいの？」
VN「…逆に、皆知ってるものだと思ってたんだけど」
その一言が、完全にとどめを刺した。
ドギョミが床に膝をついて、それを見下ろすディノがまた同情するように肩に手を置くまでを見つめる。
DN「完敗だね、ドギョミヒョン」
DK「ハクやぁ……なんでよ……」
MH「あ、」
とうとうストレッチどころじゃなくなってきたなと頭の隅で考え始めていた頃。
嘆くドギョミの声が部屋に響き渡ったとき、ゆっくりとドアノブが動くのが目の端に見えた。大きな扉が開いたその先に覗いたのは、ちょうど話題の中心だったその人で。
相も変わらず綺麗な瞳が此方を捉えたあと、Aはドアノブを握ったまま、なぜかぴたりと動きを止めた。マネキンみたいに。
目が合ったまま無意識に声を漏らしていたその一瞬、気がついたドギョミが扉のほうを振り返るのとAが扉を閉めたのはほぼ同時だったと思う。
ハクや！なんで逃げるの！なんてドギョミの声がまた大きく響いて、扉の向こうに吸いこまれるように飛び出していった。それを慌ただしく追いかけたディノの後ろ姿を見送ってから、ボノニと二人で取り残された広い広い練習室の真ん中に、ぼんやりと佇む。
二人が去ったあとだからか、やけに静かになったような気がする。
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
