名もなき理由を告げるなら｜2015｜MH. ページ28
"自分はこの人のことをよく知ってる"なんていうのは、ある種の思い込みのようなものなんじゃないかと、時々考えるようになった。
自分の知らないその人の一面が、きっとどこかに存在している。誕生日や血液型から趣味嗜好に価値観まで、あらゆる情報を知り得ていたとしても。
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MH「…なに？」
DK「Aって兄弟いたよね？」
夕方くらいから練習があるってスケジュールをマネヒョンから聞いていたから、先に入ってストレッチだけでも済ませておこうと思って、早めに練習室を訪れたところだった。
話し声が聞こえるなと思って扉を開いたら、案の定ディノとドギョミが何やら話し込んでいて。自分が声をかけるより先に、開けた扉に気が付いたディノが "ヒョン！" なんてやけに勢いよく声を投げかけてきたものだから。
ちょうどいいところに、みたいな感じの顔で。
扉を閉めて部屋の中へ数歩踏み込んだところで、ドギョミがものすごく真剣そうな顔でそんなことを聞いてきた。
二人して、じっと此方を覗き込んでくる。
急に部屋中がしんと静かになって、なんだかすごく変な気分だった。
ああこれは、何というか。答えを試されているような気がする。
MH「え、なにそれ？」
DK「え？」
DN「ほら！いないって言ったじゃん！」
答えを聞いたあと、わけがわからないって感じのドギョミと、楽しそうに声を上げるディノ。多分、Aに兄弟がいるかいないかっていう話を二人でしていたんだろうとこのときに気づいた。どういう流れでその話題に流れ着いたのかは謎だったけど。
眉を下げて困惑した表情のまま、自分とディノの顔を交互に見ながら "なんで？" やら何やらぼやいているのを見つめた。
なんでって言われても。
なんでと聞きたいのはどちらかというとこっちなんだけれども。
DK「ちょっとまって、弟いるんじゃないの？」
MH「弟？」
DK「うん。6歳と7歳と…8歳の…え？いないの？」
MH「ハクって一人っ子でしょ？」
DK「ええ？？」
疑問形で言葉を投げ続けるドギョミのそれに答えを渡したら、その頭上に更にクエスチョンマークが4つくらい増えていたような気がする。混乱が混乱を招いているような感じ。下がった眉がもっと下がって、驚きや困惑を通り越して、もはや悲しそうなぐらいの顔で。
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
