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力を緩めた訳でもないだろうに、本当に透けて通り抜けたみたいに、気づけばもう自由の身だった。
翻るブレザーの裾を目で追ってみるけど、そこには答えも何もない。
WN「…すり抜けてない？今の」
MG「なにあれ、知恵の輪みたい」
JS「ホシが一番びっくりしてるよㅋㅋ」
ホシはというと、さながら主人を呼び戻す飼い犬のようにまたその背中に手を伸ばしていたけど、力任せにしがみついたせいで皺になった衣装やら乱れた髪やらを整えるためか、一部のスタッフの人たちに隔離され始めていた。
あちこちから伸びてくる櫛やスプレーやリップを持つ手に身動きが取れなくなったであろうホシが、明らかに肩を落としているその姿が見える。
それを見て両隣で笑うミンギュとシュアヒョン。
ホシの負けだね、なんて楽しそうに。
JS「なんでまたあんなことになったの」
MG「ヤキモチだよヤキモチ」
JS「…ヒロインに？」
MG「そうそう」
端に寄せられている余った椅子をミンギュが引っ張り出すのと同時に、遠くのほうで誰かの歌声が響くのが聞こえてきた。
教室のセットの外の廊下のほうからか、あの声はおそらくスングァニかドギョミあたり。
いや、あの騒がしさはもしかすると両方かもしれないけど。
ホシが妬いたっていうのは、今から始まる個人撮影の話で。
メンバーたちが一人のヒロインに好意を向けているという体で、もちろんAもその一人として、それらしいシーンを撮る必要があったわけで。
校庭にいるヒロインを窓から見下ろして優しくて微笑む、なんて言えばたったそれだけのシーンなのだけど、ホシとしてはその"ヒロインに微笑む"のが嫉妬の対象だったらしい。
俺にはそんな顔してくれないくせに、とか何とか。今のこれをまとめるならそんなところ。
そうして半ば強制的に引き剥がされたホシを見ながら、自分の左隣に腰を下ろしたミンギュがまた口を開いた。
MG「マンセって、なんかホシヒョンみたいじゃない？」
JS「ホシ？」
MG「嫉妬しちゃうーとかさ、まさに今のホシヒョンって感じ」
WN「でもこれ書いたのウジだよ」
MG「ヒョンもおれも書いたじゃん」
WN「ああいや、そうだけどそうじゃなくて」
何が？って首を傾げるミンギュと、なぜか黙り込んだシュアヒョン。
たしかにそう言われると、この歌詞が似合うのはホシのほうなのかもしれない。
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
