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ジョンハニはAを目で追うことがある、とか何とかスンチョリヒョンがぼやいていたのを思い出した。
つまりあれはジョンハニヒョンがAに見惚れているっていう、そういうことらしい。
JS「好きだね、ほんとに」
WN「もうあの二人で撮ったほうが早いんじゃない？」
MG「そんなことしたらもっと面倒くさいことになるじゃん」
WN「何が」
MG「あそこの人」
ミンギュがそう言って、また別の方向を指し示した先。
視線を投げてみると、スタッフの人たちに囲まれながらメイク直しやらヘアセットやらを施されているAと、いつの間にやらその背中にぎゅうとしがみついているのは見覚えのある後ろ姿だった。
ミンギュが名前を出さないせいで誰だろうと一瞬考えたけど、あんなふうにAにべったり張り付く人はと聞かれれば思い浮かぶのは一人しかいない。緑がかった短い髪とヘアバンドに、切長の瞳が覗く。
随分と人懐っこい虎だな、なんてその姿を見つめながら思うのにもやけに慣れてきたような気がする。
あれじゃもう虎というより、むしろ犬とかなんじゃないか。
WN「…もう面倒くさいことになってない？」
MG「どうする？一応剥がしとく？」
JS「撮影中は離れるよ、さすがに」
そう言って足を組みながら見つめていたのに、一向に離れないどころかむしろ巻きつけた腕が食い込んでいくようなその勢いに、シュアヒョンが小さく笑みを溢すのを横目に見ていた。
呆れ半分微笑ましさ半分、といったところだろうか。二人を見つめる視線が思いの外穏やかで、それを苦笑と呼ぶには少々優しすぎることに気づく。
JS「全然剥がれてなかった」
MG「見て、珍しくAが戦ってるㅋㅋ」
その光景はたしかに珍しかった。
いつもならされるがまま巻き付かれているだけだろうに、撮影が控えているからか、なかなか外れないその両腕からどうにか抜け出そうと悪戦苦闘するAの姿が遠くにある。
それを見て笑うスタッフの人たちの声が響いて、ビハインドの撮影用であろうカメラが近づいていくのすら見えた。完全に見せ物と化している、あの空間が。
そうしてしばらく同じように眺めていたとき。
突然ホシの腕からするりと抜け出すのが見えて、あれ？って三人揃って首を傾げた。目を離さずにずっと見ていたのに、抜け出せそうだなっていう明確な先触れらしいものも何もなかったから。
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
