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「…なんで？」
JN「寂しそうな顔してたから」
「…」
無言で見つめ合う、数秒間。
こんなことを言われるとは思っていなかったのか、それともどう返そうか考えていたのかはわからないにしても、いつものようにおかしな冗談が降ってこないのは、図星だからなのかなと考えてみたりもする。
的外れかもしれないけど、少しだけそんな気がした。
いつも動じないまっすぐな瞳が、驚くように揺らぐのをこの目で見たから。
だけどそれもほんの一瞬のことで、一度瞬きを介したあとではやっぱりいつも通りで、なんて事なさそうな泰然とした普段の目つきに戻っていた。
見間違いだったのかもしれないって、そう考えてしまうくらいには一瞬。
「うーん。そんなに」
JN「ほんとに？」
「本当に」
JN「嘘じゃない？」
「嘘じゃないよ」
嘘か本当かわからなくて、ひとまず言葉を投げかけた。そうして結局返ってくる声すらいつも通りで、淡々とした返事が投げ返されるだけ。
こんなことを直接聞いたって、本当だと返ってくる以外にないことはわかっていたのに、そうじゃない答えが返ってくるかもしれない、なんてまた確率の低い可能性を信じてしまうのはなぜか。
多分、そのもしもがあればいいと心の内で願っているから。
きみの言うことなら、どんな答えでも聞きたいと思っているから。
そうして視線が交わったとき、変わらない目つきが訴えかける何かにずっと手を伸ばし続けている。
揺れ動く瞳の奥で抱くそれを分けてくれたっていいのに、なんて少しだけ。
「ジュニがいるから、寂しくない」
それにほら、スニョンイっていうくっつき虫もいるし。
そう言って細められた瞳に、嘘はなかったような気がする。
JN「…ほんとは、犬じゃなくて花だったんじゃない？」
「虫に好かれるから？」
JN「虫に好かれる犬なんている？」
「いるかもしれない。この世のどこかには」
探しに行こうか？って、綺麗な顔でまた変な提案をするものだから。
そのときに上に重ねられた掌がやけに温かくて、その温もりに突然眠気を誘われるのがわかる。
あるときどこかで聞いた好きな人といると安心して眠くなるっていうのは、あながち間違ってはいないんじゃないかとこのとき思った。
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
