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ああ、AはAのままなんだ。
この瞬間に、そんな当たり前なことをなぜかはっきりと思い返している。
SC「俺が嫌だからだめ。次から切るな、わかったか」
「それ、スンチョリが決めるんだ」
SC「そうだよ。おまえじゃなくて俺が決めるの」
「横暴だな」
SC「何とでも言え」
「じゃあ、わかったよ。ジョンハニが短い時は伸ばすから」
此方を捉える透き通った瞳のことを、自分は誰よりも知っていた。
細い髪の手触りも、天使の輪みたいに煌めく艶も、その瞳の奥ですべてを見てきた大きな向日葵の存在さえ、昔と何も変わっていない。あの時と何もかもが同じなのに。
その視線の先にある自分の姿も、そうやって目を細める意味も、ずっとずっと知っていたのに。
SC「…いちいち髪型なんか変えなくても区別ぐらいつくだろ」
「まあいいじゃん。許してよ、これで」
そう言ってAが差し出してきたのは、マネヒョンが買ってきたであろう人数分の昼食で。
スーパーとかに売っている惣菜の、フードパックに入ったビビンバ弁当を片手に、ジュースもあるよ、なんてレジ袋を漁るAの小さな頭が動く。
短く切り揃えられた柔らかな黒髪が揺れ動くのが、いやに目につくものだった。
眉間に皺を寄せたまま恨めしそうにそれを見つめていたら、再びくるりと振り向くのはとびきり綺麗で作り物みたいなその顔。
星を纏う大きな瞳は、長い睫毛を瞬かせながら此方を見つめるだけだった。
何でそんな顔をするのかわからない、みたいな感じで。
ああほら、やっぱり。
これのどこが同じなんだよ、ジョンハニと。
SC「嫌だ。許さない」
「いらないの？ご飯」
SC「ほら、また勝手に終わらせた」
「今のはちゃんと終わってるよ」
SC「俺の中では終わってない」
弁当を持つその細い手首をぎゅっと掴むと、また幾度か瞬く榛色の双眸。
軽く首を傾げたかと思えば、此方を向いたその瞳の奥に、うっすら小さく自分の姿が浮かび上がるのを見た。
また目を細めたあとで、息を吸ってゆっくりと唇が動く。
「めんどくさいね、スンチョラ」
SC「…おまえなぁ」
「可愛いねって意味だよ」
スンチョリはそのままでいてね。
そんなよくわからない言葉の下で、もう片方の手で優しく頭を撫でられた。
その言葉をそっくりそのまま返したとしたら、きみはどんな顔をして、どんな言葉を紡ぐんだろうか。
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
