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先の見えない曖昧な会話。
淡々として投げやりなよくわからない返事を聞きながら、ボノニのほうへ顔を向けたその小さな後頭部が、やっぱり違う人のように見えた。
練習室でふわふわと揺らいでいたあの長い髪は、今はもう面影すらない。
SC「…おまえはいっつも一人で勝手に喋って勝手に終わらせるよな」
「そんなつもりはないけど」
SC「今も勝手に終わらせただろ」
「まだあるよ、まだ」
SC「ほんとかよ」
「ほんとほんと」
「ジョンハニと、似てるんだって。後ろ姿とか」
SC「…ハクが？」
「そう。ファンの人とか、皆が言うには」
すぐそばの椅子の背もたれに掛かっていたブランケットを手に取って、無防備に眠りにつくボノニの身体にゆっくりと被せる。
衣擦れの音さえないような、静かなそよ風のような時間だった。
「そんな人達が同じ髪型にしたら、わからなくなるじゃん。
ジョンハニを見たいのに、違う人だってなったら悲しいと思って」
こうしたほうが、ちゃんとジョンハニを見つけられるでしょ。
ハンガーに引っ掛けていた自分の上着を外したあと、ボノニの隣で眠りこけたミンギュにふわりとそれを被せながら、やけに優しい声でそう言った。
その表情は見えなかったけど、どんな顔をしているかなんて大体想像くらいはつく。それもあんなに穏やかな声をこの瞬間に耳にしてしまったものだから、余計に。
SC「…そんなことで？」
「うん。そんなこと」
「それに、あの長い髪はジョンハニのものだから」
一向に起きない弟たち二人を見つめたまま、Aはしばらく動かなかった。どんな気持ちでそれを見ているのか、何を考えて話をしているのかまではわからなかったけど。
SC「…俺は好きだけど。ハクが長いのも」
「ああ、そうなんだ」
SC「興味ないだろ」
「あるよ。この世で一番興味深い」
SC「一言余計」
「嘘じゃないって」
いつもの調子で軽い冗談を交えながら、しばらくして立ち上がったあとで、また此方へと近付いてきては自分の座るソファのすぐそばに腰を下ろした。
すぐ近くにある綺麗に整えられた短い黒髪に、おもむろに手を伸ばして触れてみる。
スタイリング剤やらスプレーなんかを纏ってはいるんだろうけど、その手触りこそ昔と何ら変わりなくほとんど同じだった。
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
