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もちろん見抜けないくらいのものを持ってくる時もあるけど、今日のは有り得ないほうの嘘だった。多分、いま適当に考えたものが口をついて出たとか、そんなところだと思う。
SC「…ずっと聞こうと思ってたけどさ」
「うん」
SC「何で切ったの。ずっと伸ばしてたじゃん」
本当に突然だった。
いや、Aといえば何もかも突然なのがむしろ普通なんだけど、これに関しては本当にいきなり。突然という言葉の通り、まさに急に。
会社でその丸っこい頭の後ろ姿と露出した長い首を目にしたとき、知らない先輩か役員の人か何かだと思って挨拶したくらいだった。
振り返る綺麗な顔に見慣れた瞳の色が見えた瞬間、いまいち状況が飲み込めなくてどうしようかとも思った。他のメンバーも似たような反応で、Aを見るや否や言葉を失っていたけど。短い髪と中性的な顔立ちも相まって、あまりにも美青年って感じのビジュアルになっていたから。冗談抜きで、本当に。
昔は綺麗な女の人って感じだったのに、今じゃもう青年になってしまったらしい。見ているこっちが混乱する。
「あれは伸ばしてたっていうより、放置してたら勝手に
伸びてたんだよ」
SC「そのまま放っとけば良かったのに」
「そういうわけにもいかないから」
SC「…切れって言われてたっけ？」
「いや、何も言われてない」
SC「じゃあなんで？」
二人を起こさないように足音を潜めながら、ゆっくりとマットの上を踏みしめている。その横顔からすらりと伸びた鼻筋の下、形の良い唇が微かに動くのを目を凝らしてじっと見ていた。
「ジョンハニが伸ばしたから」
なんてことなさそうな表情と声のまま、壁際に放られていた小さめの黒いリュックへまっすぐに手を伸ばす。
ポケットのチャックを開けたかと思えば、取り出したのは携帯電話で。ぼんやりと明るくなった小さな画面には、13時ちょうどの数字が浮かんでいる。
SC「…それだけ？」
「それだけ」
それだけ。
たったその一言を言い終えて、振り返った瞳とちょうど目が合った。
珍しく前髪を分けているおかげか、色素の薄い明るい瞳がいつもよりはっきりとよく見える。
「ジョンハニの長い髪、スンチョリも好きでしょ」
SC「…それが何」
「だからだよ。だから切る」
SC「全然見えてこないんだけど、話が」
「うん。わからなくていいよ」
SC「なんで」
「なんでも」
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
