変わってない｜2015｜SC. ページ11
この日は、朝早くから音楽番組の収録があった。
デビューしてから忙しない日々で、目まぐるしく過ぎていく日々をこなしながら練習も詰め込んで、会議を重ねて。色々と話し合いながら疲れ果てて気絶するように眠りについて。
重い身体を引きずりながら車に乗り込んだあと、あんまり記憶がないけど、控え室でもう一回寝直したんだったと思う。たしか。
なにしろ14人もいる大所帯グループだから、メイクの順番が来るまでは寝てても平気だって、そうマネヒョンが言うから。
その瞬間に小さいソファの上で意識を手放したところまでは、軽く覚えてる。
それから今。
なぜか息ができなくてぼんやり目を開けたら、自分の鼻を摘むAの手と覗き込む綺麗な顔が見えたところからは、よくわからない。
SC「…おまえ、殺す気？」
「だって起きないから」
SC「だからって、……」
どれくらい時間が経ったのかすらわからないまま。いつの間にやら背に掛けられていたブランケットに包まれながら、鼻先から離れていく掌を見つめて、再び視線を動かしたそのとき。
言葉が出てこなくて、しばらく口を開けたまま時が止まった。
Aも黙って見つめ返すだけで微動だにしないから、謎の沈黙が5秒くらい。
ろくに回らない寝起きの頭をぶら下げながら、その瞳を見つめたままでいる。
ああ、そうか。そうだった。
髪を切ったんだった。
ついこの間、急にバッサリ短く。
それをやっと思い出すのに数秒かかって、更にはメイクもしているわけだから尚更違う人みたいに見えて、言葉につっかえてしまった。
Aくらいだと、メイクなんてしようがしまいが問題ないくらいの顔立ちをしているんだろうけど、こうして綺麗に整えられているのを見ると、これはこれでまた違った雰囲気が出てくるものだなと思う。人間離れしたそれに、より一層磨きがかかったような気がする。
通りでジョンハニが無意識に目で追ってしまうわけだ。
「なに？」
SC「…ハクだよな？」
「違うよ。ジュニ」
SC「いや違う。おまえはハク」
「不正解」
SC「大正解」
「…」
SC「だから殺す気かって」
なぜかまた鼻を摘もうと顔に手が伸びてきたものだから、その指先を掴んでやるつもりでブランケットから手を出したのに、その白い手は素早く引っ込められて結局捕まえられなかった。
こういうときの危機察知能力ほど長けているものはないと思う。本当に猫みたいに。
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
