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指輪をはめた右手の小指を、その白い手が絡めとるように引っかけて、手にとって、ぎゅっと固く握っているのを見た。
その細い手の小指にいる同じ指輪が、存在を知らせるようにきらりと光る。
「大丈夫。ドギョマ」
前を向いたまま渡されたその言葉に、なぜかひどく安心した。
Aが大丈夫って言うと、大概のことは大丈夫になんじゃないかってそんな気がしてくるのが本当に昔から不思議だったけど。
まっすぐに遠くを見つめる横顔を、引き込まれるようにただ静かに見つめていた。
ひとりじゃない。
固く結んだように繋ぎとめたその手が、そこにはめられた指輪が、そう訴えているような気がして。
そのときに思い出したのは、宝石のように煌めく約束のこと。
誰よりも輝かせてあげるって、いつの日かそう歌ったきみの言葉。
「守るから、ちゃんと」
何よりも強くはっきりと聞こえた、たった一言。
握る手がさっきよりも強まって、いつの間にかその明るい瞳が此方を覗き込むように捉えていた。
薄い暗がりの中、ステージから溢れる光が榛色の双眸を浮かび上がらせる。いつだってそれは星屑を閉じ込めたように煌めいて、枯れることのない向日葵がすべてを照らし出していて。
綺麗に整えられて天使の輪っかみたいに艶のある黒髪が、ゆっくりと揺らぐ。
とびきり綺麗で変だけど、優しくて誰よりも強い人だと思った。
きみという人を言い表すには、こんな言葉じゃ足りないんだろうけど。何なら世界中の言葉をかき集めたって、当てはまらないのかもしれないけど。
きみにぴったりの言葉を探し出すまでは、
きっと輝くその場所に、自分のそばにいてほしい。
握った手を自分の頬へ引き寄せると、薄く潤んだ綺麗な瞳はゆっくりと細められて、柔らかく弧を描いたまま此方を向いていた。
なんだかおかしくなってきて、そのままくすくす笑い合ったりもして。
DK「離さないでいてくれる？」
「離すつもりなんかもともとないよ」
DK「本当に？」
「本当に」
「だから、怖くないよ」
より一層強まる歓声。
目が合ったこの数秒間がやけに長く感じて、やっぱり時間が止まっていたんじゃないかって、そんなふうに思えた。
かけられた一つひとつの言葉が、ずっと耳に残ったまま。
魔法のように軽くなった身体と、ゆっくりと響く鼓動を抱いて。
眩しいほどに煌めく光の先に、大きく一歩を踏み出した。
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作者名：をる | 作成日時：2024年3月1日 3時
