Be satisfied with……(3) ページ1
遠くには母さんの声。目の前には変わり果てた兄。
剣を振り上げるけど、それを決して振り下ろす事は無い。
何故か？
もう兄自身が分かっているんだろう。思い出しているんだろう。けれど、やるところまでやってしまった。
僕の腕は所々に血が滲み、疲労に身体の動きは鈍る。PSIももうそろそろ、使えなくなるだろうね。
こんな時でも冷静な自分が、正直信じられない。
「クラウス」
言葉は返ってくるはずない。けど、何となく、名前を呼んでみる。
目の前の彼の、本当の名前を。
「クラウス……」
二言目は無意識に。
「帰ろう」
クラウスは辺りを見回している。何かを探してるみたいに。何を探して？わからない。それは彼のみが知っている。それでいいと、思った。
クラウスは仮面を取った。僕に瓜二つの顔が、そこにあった。
ダメだ。その先へ進んではいけない。僕は彼がこの後、何をするのか何となくわかった。だから、彼に駆け寄る。
けれど。
無情にも彼の手からイカヅチが放たれ、更に僕の胸にあるフランクリンバッヂが、イカヅチを跳ね返す。
強烈なイカヅチを受け、クラウスは大きく傷ついた。
僕はクラウスに駆け寄る。
そして強く抱き締めた。
きっと、これが最後だと思うから。
「クラウス……お母さんのところに行っちゃうんだね」
「ああ……もう僕は、駄目だから」
でもな、と続ける。
「僕、満足したよ。こうしてさ……最期に、お前の顔が見れたし」
流れた涙は、たぶん、僕のものだ。
クラウスの頬に、跡を残してキラキラ光ってる。
ふたつ分の跡を残して。
「泣くなよリュカ……僕、さあ……お前の笑顔を見て、逝きたいな」
「うん……っ」
涙を拭いて、精一杯の笑顔を見せた。
涙が溢れて止まらないけれど、笑った。
クラウスは心底満足そうに、微笑んだ。
目を閉じたクラウスは、幸せそうだった。
続く (更新停止中)
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作者名：yuui | 作成日時：2016年12月6日 9時
