May peace be with you.【特撮】

前言撤回：九条貴利矢[リクエスト] ページ37

私は恋人の九条貴利矢を今、嫌いになった。

理由は単純。
目の前で他の女の人を口説いたから。
好きなお店を聞いて、楽しみですね。何て言うのは口説き文句でしか無い。

此処が病院じゃなかったら殴っていた。



「A、怒ってる？」
「……早く八乙女先生と食事でも行ったらどうですか？」



怒ってるに決まっているだろう。よく怒ってないと思ったものだな。

6歳児め。小児科でもお前は管轄外だ。
診てもらいたいなら私では無く、永夢の所へ行け。



「本当に浮気じゃないんだよ」
「完全に口説いていましたよね」



言い逃れをしようたってそうはいかない。

現場を見てどれだけ心が痛くなったか。
一瞬呼吸するのを忘れたぐらいだ。



「あれは今度お偉いさん達とする会食のお店を考えてたの。八乙女先生に好きなお店を聞いたのはその為」
「……ほんと？」
「ほんと。それに自分、A以外に興味無いし」



そんなの聞いていない。いつも会食する時は事前に誰が居るかも含めて教えてくれていたのに。

いや、そんなのは言い訳にしかならない。



「忙しくて伝え忘れてた。ごめんね」
「私も、ごめん。事実を確認しないで勝手に疑って、貴利矢を悪いモノ扱いしてた。ごめんなさい」



何て馬鹿な事をしたんだろう。完全に私の早とちりだった。

事実確認ぐらいしておけば良かったのに。
冷静さを無くしていた。



「そんなに謝んなくていーよ。自分も悪かったから」
「でも……」
「じゃあ、デート行ってくれたら許してあげる」



嘘でノらせる時と同じ様に笑う。
何処か色気がある笑顔はどんな事にもYESと言わざるを得ない感じがある。

この顔をされた時、私がする選択は一つだけだ。



「ノってあげるよ」



待ってましたかのごとく、手を引かれる。

今日行くのはどんな所なのだろうか。
貴利矢が連れて行ってくれる場所は何処も楽しい。

まあ、一緒に行く楽しみもあると思うが。

そうだ、前言撤回しておこう。私は九条貴利矢を嫌いになってなどいない。大好きだ。

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