10 ページ10
私は物凄く浮かれていた。
見えないところで私のことを話している蓮二くんが想像出来なくてニヤける。
そんな様子を友達は「気味が悪い」と罵った。
けれど今の私にはそんな悪口ノーダメージ。
最近は控えてたけど週末にデートに誘ってみようかな、などと企む。
担任の話し声など一切頭に入らないまま、その日の終業の合図が鳴った。
廊下に出るとＦ組もHRを終えたのか、蓮二くんが先を歩いていた。
「蓮二くん」
そう呼ぼうとすると目の前にぬっっと仁王が現れて、立ち塞がる。軽い悲鳴をあげた。
「よぉ。」
「急に出たら危ないよ。」
「まぁ話を聞きんしゃい。」
「私もご一緒しても？」
いつの間にやら入ってきた柳生くんは眼鏡のレンズをキラリと光らせる。
今日はよく絡んでくるな。
思わず苦笑いをする。
「Aがどうかしたか？」
先を行ったはずの蓮二くんが横入りして会話に参加してきた。私は少し安堵した。
と同時に戻ってきてくれたことに歓喜する。
再び名前を呼ぼうとすると仁王が遮るように私の肩を組む。
「なぁんもせんよ。仲良く話しているだけじゃき。」
「えぇ。部活には遅れずに行くので。」
なぜ邪魔をするんだ。
柳生くんまで便乗して何を考えているんだ。
という困惑の顔を蓮二くんは気づかぬまま
「そうか。ではまた。」
とだけ言って部室へと向かった。
ちょっと待って、私まだ話してない。
「蓮二くん！」
少し大きめの声で呼ぶとくるりと振り返る彼。
その顔を見ながら私は「また明日ね。」と言った。
「あぁ。また連絡をしよう。」
蓮二くんは表情を変えないまま、だけど何処か優しい雰囲気を漂わせた。
そんな彼に顔を赤くした。
彼が廊下から完全に姿を消したのち、少しの沈黙が流れる。
その間、仁王は私の肩を抱き寄せたままだ。
「…そろそろ離してくれる？」
「…そうじゃな。」
「…場所を変えましょうか。」
後に仁王はこう語る。
「なんじゃ今の甘い空間は。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さたらま | 作成日時：2022年2月4日 2時
