7 ページ7
「え、仁王だったの？！」
屋上へ続く階段。
そこに響く私の声。
申し訳なさそうに仁王は謝罪する。
「そうじゃぁ…。昨日の柳は俺じゃ。」
「いつもより覇気がなかったので問い詰めたらこんな有様です！」
全く！と怒っているのは柳生くんだ。
眼鏡がキラリと光る。
彼のよく通る声はつらつらと正論をぶちかましていく。
「乙女を泣かすのも言語道断です。いくらイリュージョンの腕を試したいからと言って恋人に仕掛けるなんて！人様の恋愛に首を突っ込んではいけませんよ、仁王くん。」
「もうせん…。」
「謝ってくれたからいいけど何でこんなことしたの？」
しょんぼりする様子が可哀想になってきて赤子を宥めるように理由を聞く。
すると彼は落としていた視線をあげ、ピッと指差しながら柳生くんに向けた。
「昨日柳生に荷物拾うてもろたじゃろ。」
「え、うん。」
「指差しは失礼ですよ。」
「あの後、Aが柳生のこと見つめとったから…、」
「うん。」
「聞いてますか仁王くん。」
「好きなんかおもて、からかおうとしたんじゃ。」
「こら！」
「な、な、なんてこと言うんですか！！」
焦る私と赤面の柳生くん。
キュンとしたことに関しては間違いでない。
ただ、あの優しさを蓮二くんに求めただけ。
「謝っとるじゃろ！」
「私は蓮二くんが大好きだから…って言わせないで！」
「そんなに否定しないでください。」
少し揉めたが私は謝らなくてもいいようだ。
勝手に気まづくなって、挨拶できなかったことを少し後悔した。
そういえばこの2人もテニス部だったな。
「ねぇ、蓮二くんから私の話って聞いたことある？」
興味本位で質問した。
恐らく話題にすらしてないだろうが。
「Aさんの？」
「あー、やっぱり聞かなかったことにして。」
この反応は本当に話したこと無いんだろうな。
少し悲しいが予想は出来たことだ。
「いや、普通に話してるぜよ。」
「え。」
「なぁ？柳生。」
「えぇ。むしろよく聞きます。」
「ま、まじかぁ。」
「どんなこと言ってるか聞きたいか？」
仁王のまさかの発言に吃る。
あの蓮二くんが…私のことを…って話すほどのことしたか？何も出来てない。
私のデータとかだろうか。やめて欲しい。
というか…
「いや、それ聞けただけでも嬉しい…！」
「そうかぁ。」
「良かったですねぇ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 12人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：さたらま | 作成日時：2022年2月4日 2時
