恋に落ちる音。【ＳＳ】 (ページ10)

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「誰と間違えてんの」

そう問うと

『････あの、ごめんなさい』

Aが気まずそうに振り向いた。

そして俺の顔を見た瞬間、これでもかというくらい目を見開いて固まった。

じっと見つめられ、緩みそうな口元を必死で抑える。

何でそんなくりっくりの目で見てくるんだよ。

なんか照れるだろ。

「何じっと見てんの？」

『え？あ、ごめんなさい･･･何でもないです』

「何でもないなら人の顔見てないで手動かしたら？見たところ会議の資料作ってるんでしょ？」

見られてるという照れと、早くしないと残業することになるんじゃないか、という心配が
混ざって、嫌な言い方をしてしまう。

しまった、と思った頃にはもう遅くて。

『････言われなくてもやります』

不機嫌そうな声。

ああ、やってしまった。

最悪な男だと思われたかもしれない。

結局彼女はそのまま作業を開始させた。

落ち込みながらもじっと見ていると、再び声をかけられた。

『････あの。気が散るんですけど』

「お構いなく。俺達営業部は人事部の様子を見に来ただけなので」

笑顔を装うと、すっと目が細められる。

『へぇ。全体じゃなく一人にピッタリつくなんて、営業部のエリート様は随分お暇なんですね。羨ましいです』

「あ？」

今までにないような煽りをされ、思わず威圧する。

･･････いやいやいや、違うだろ。

そこは「お前に会いに来た」くらい言えって。

え？寒い？うるせぇ。

「あ、もしかして「大沢みつき」さん？」

どう切り返そうか腕を組んで悩んでいると、後ろから潤が出てきた。

さっきまでニノ達と喋ってただろお前。

『え？ああ、うん、そうだけど･･･』

「すげぇな、あんた」

そう言って彼女に何か耳打ちする。

近いんだよ馬鹿。
やめろ。

会話が終わったのか、俺に視線を送るA。

だから上目遣いやめろって。そんなの他の男の前でやってみろ。

全員惚れるだろうが。

それを想像しただけでイライラが募った。

「ふざけんなよ。こっちだって別に暇じゃねぇんだわ」

『はぁ、すいませんでした』

「何それ。謝ってるつもり？からかってんの？」

『そもそもはあんたがキツイ言い方するからでしょ』

「はぁ？」

お互いにイライラしているせいか、売り言葉に買い言葉。

せっかく再会できたっていうのに

ムードもくそもあったもんじゃないな。