恋に落ちる音。【ＳＳ】 (ページ40)

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「A」

責めてやろうかと思ったけど、実際出た声は甘く、切ないものだった。

こんな時までAに甘い自分に笑いそうになる。

「俺のこと、好き？」

この状況で“俺”としてじゃなく“智くん”として聞くなんて馬鹿だとは思うけど。

でも、もしかしたら「翔くんが好き」って言ってくれるかも、なんて、
そんな淡い期待もしていた。

どんだけ女々しいんだ。

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿けどAは

『うん････智のこと好きだよ･･･ずっと･････そう言ってんじゃん････』

「･････そう」

予想を裏切らず、期待を裏切ってきた。

･････分かり切ってたはずなのに、実際に言葉にされるとこうも痛いのか。

はぁ････本当、馬鹿みてぇ。

『どうしたの････？･･･どう答えて欲しかったの･･･？』

「････分かんねぇ」

『分かんねえじゃなくて･････』

智くんとして聞いたくせに傷付いて、

でも俺として聞くのは怖いだなんて。

どんだけ我が儘なんだ。･･･というか、俺ってこんなに憶病だったか？

いつもの俺ならもっとグイグイ行けるはずなのに。

どうしてこんなにも弱くなってる？

･････Aに、本気で惚れてるから？

「(････まぁ、それ以外の理由なんて存在しないよな)」

本当に恋をしたことがなかったから、

本気で相手を振り向かせたいと思ったことがなかったから、

だからこんなにも弱いんだ。

「じゃあ、俺のことはもうどうでもいい？」

『･･･え？』

それじゃダメ、だよな。

智くんに負けないって宣言したあの時の自分に戻る。

時間の問題とか言ってサボるのは辞める。

ま、余裕そうに見せるのは変わらねぇけど。

「今更心変わりしたなんて許すわけねぇだろ」

実力行使。

絶対、心の底から惚れさせてやる。