恋に落ちる音。【ＳＳ】 (ページ29)

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「もういいや････とにかく今すぐ戻って。教育係は変えるよう俺から言っとくから」

元から変えてほしかったしちょうどいい。

「そんな････！嫌です！･･･もしかして、私が櫻井さんのこと好きだって分かったからですか･･･？」

「真面目に仕事してくれるなら好きだろうが何だろうがどうだっていいけど、そうじゃないなら俺は一緒に仕事したくない。････っていうか」

松本にも色目使ってるでしょ？

俺の言葉に、完全に固まる新人。

あれでバレてないと思ってたことにびっくりなんだけど？

「見てたら分かるよ。あのさぁ･･･男漁りたいなら他の部署か、そもそも別の会社に行ってくれる？営業部がどれだけ忙しいか分からないほど馬鹿じゃないよね？」

「･････うっ、うう･･･」

「泣くだけの女は嫌いなんだよ。いいからさっさと失せろ」

泣けば許されると思ってんのかよ。

一番嫌いなタイプだ。

「････あ、そうだ。あと･･･」

泣きながら去ろうとする新人に呼びかける。

ちゃんと訂正しとくか。
変な噂でも流されたら困るし。

「みつきは、俺が一方的に好きなだけだから勘違いすんな」

「････」

「何か散々言ってたみたいだけど。別に色目とか一切使われてねぇよ、お前じゃあるまいし」

････これじゃ訂正っていうか綺麗にトドメ刺しただけだな。

まぁいいか。これ以上あいつに優しくする理由ないし。

どんどん遠くなる女の背中を見つめてため息を吐く。

Aは心配そうに俺の顔を覗いた。

『良かったの？泣かせたままで』

「泣き止ませたら付け上がるだけだろ。それに････」

『？なに？』

「････みつきにごちゃごちゃといちゃもんつけてんのが気に喰わなかったからいいんだよ、あれで。あーあ、すっきりした！」

『････サラッとそういうこと言うの本当にイケメンにしか許されないことだと思う』

「知ってる。････あとは、智くんと恋人だって認定されてんのも気に喰わなかったつうか、マジで腹立った」

『え？いやだからそれは、』

「まぁ別にいいけど。お前が「翔くん無しじゃ生きれない♡」って言うのもそう遠くない未来だしな」

ちゅっ、と額にキスを落とせば真っ赤に染まるAの顔。

ほらな？

その時間(とき)はそう遅くない。