恋に落ちる音。【ＳＳ】 (ページ22)

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「大沢先輩、待ちましたか？」

当日。

既に集合場所に佇んでいた彼女に駆け寄る。

案の定、ビックリし過ぎて声も出ないみたいだ。

『はは、大丈夫、待ってないよ』

「何でそんなに疲れた顔してるんですか」

まぁ、そんなこと言いつつ俺に見惚れてるのは分かってる。

どうせ「スーツもめちゃくちゃかっこよかったけど、こういうラフなのも最高」とか
思ってるんだろうな。

え？自意識過剰？

まさか。

それが恋愛感情でないにしろ、好意的な視線には気付くっての。

散々そういう目を向けられてきたからこそだ。

そわそわと視線を泳がす彼女の手をぎゅっと握る。

「早く行きましょう、先輩」

『！？な、何で敬語！？』

･････ギャップ作戦は無理だったか。
つーか普通なら逆だもんな。

「何でもいいでしょ。ほら早く！」

俺はAの手を引きながらチケットを取りに駆け足で向かった。

.

.

そういえば映画が始まるまで暇だということに気付く。

Aがこっちを見るから、じゃあ無難にゲームセンターで時間潰そっかって微笑みかけた。

何を思ったか知らないけど、ちょっとニヤけたり首を振ったり。
見てて飽きない。

「なに百面相してんの？」

『べ、別に何も！それよりさっきの敬語は何だったの？』

「ギャップでときめいてくれるかなって。けど反応薄いから止めた」

『困惑しかなかったね』

だろうな。
自分でも思った。

『あ！クレーンゲームやっていい？』

目の前のクレーンゲームを見て走って行くA。

「いいけど････なんか欲しいの？」

『特にはないけど、なんとなくぬいぐるみが欲しいなって』

「ふーん」

･･････これ、俺が取ったほうがいいんじゃないか？

だよな？そのほうが好感度も上がるし、俺からのプレゼントにもなるし。
一石二鳥ってやつだ。

俺は財布を出し、４００円を取り出してクレーンゲームと向き合った。

「クレーンゲーム久々だからなぁ････どんくらいで取れんだろ？」

あんまり金かけると、逆に気使わせそうだしな･･･。

「明確に欲しい物がないなら、こっちで適当に決めてもいい？」

『櫻井くん････何で･･･』

「････好きなやつにプレゼントあげたいって思うのってそんなに変？」

そう言うと、ポカンと口を開けるA。

クレーンゲーム好きっていうのもあるけど、と付け足すとクスクス笑う声。

･････子供扱いされてるみたいでちょっと複雑。